吉野家はなぜ苦しんでいるのか? 5つの仮説を考えた:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)
低価格競争でライバルチェーンの後塵を拝し、親会社が2010年度決算で89億円の赤字を出した吉野家。不振の原因は「牛丼業界の“利益なき安売り競争”にある」と言われるが、筆者は吉野家離れが進んだ理由をそれ以外にも指摘する。
吉野家苦境の5つの仮説
仮説1:吉野家の牛丼という単品嗜好の崩壊
牛丼単品に消費者が飽きたという仮説。現にすき家や松屋の主力は定食にシフトしている。餃子の王将も躍進ペースはスローダウンしたが、依然として好調。ご当地メニューも支持されている。好調のマクドナルドは、「テキサスバーガー」や「NEWてりたま」で話題をさらう。
もちろん吉野家も「豚生姜焼定食」「カルビ焼定食」「牛鮭定食」などでバラエティニーズに応えてきた。だが「吉野家=牛丼」というブランドイメージが堅固なあまり、牛丼客以外の新規顧客を開拓しきれていない。
仮説2:吉野家はヘルシートレンドにのまれた
健康的な食べ物の想起ワードといえば、ベジタブルや薬膳、マクロビオティック、ローフードなど。肉は一切れも出てこない。フレッシュネスバーガーの「ベジタブルバーガー ビーンズ」や「ベジタブルバーガー マッシュルーム」は、罪悪感なくバーガーを食べられるということで女性層を開拓する。
もちろん、吉野家にもサラダや漬け物、紅生姜がある。でも牛丼は肉がたっぷり。「野菜牛丼」みたいなコンセプト商品も欲しい。余談だが米ケンタッキーの「Double Down」はあまりに過激。チキンでチーズとベーコンをはさむなんて……ヤバすぎる。
仮説3:吉野家は業態開発で負けた
「たもん庵」は、シコシコうどんとトッピングで人気を集める。フードコートにも多く出店して、1人でもグループでも気兼ねなく楽しめる食スタイルを提供。フレッシュネスバーガーの注目の新業態は「そば処 東京」。コンセプトは“ジャズが流れる立ち食い蕎麦屋”である。
カウンターで「があーっ」とかきこむスタイル、もはや賞味期限切れなのではないか。
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