基地問題で見えてきたもの。それは鳩山首相が“政治音痴”だったこと:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
大方の予想通り、普天間基地問題が暗礁に乗り上げた。県外・国外とあおっておきながら、辺野古に滑走路を建設し、一部を徳之島に移転すると言われても、多くの人は受け入れられないだろう。今回の時事日想は鳩山首相の言葉の“軽さ”などを考えてみた。
「政治音痴」の首相
外交の舞台で方針転換ができないわけではないと思うが、その時にはなぜ方針を変えたのか、あるいは変えざるをえなかったのか、他国に対して十分かつ日本の立場を悪くしない説明が要求される。極端に言えば、「屁理屈も理屈のうち」ぐらいの厚かましさが必要だ。いわゆる大国がどのくらい厚かましい議論を展開してきたか、歴史をひもとけばすぐに分かる。イラク戦争開始のときの安保理の議論を聞いても分かる。とにかく戦争を始めることを決めていた米国のブッシュ政権は、イラクのフセイン大統領が大量破壊兵器を保有していることは「確実だ」と主張した。その主張の根拠がいかに薄弱だった分かったときには、フセイン大統領はすでに「処刑」されていた。
少々強引と言われようがどうしようが、理屈をこねて自国の利益を追求する。そんな外交の場で、リーダー自ら「浅かった」などと告白されたら、国民はたまったものではない。
「暴走」する鳩山首相を止められなかった側近たちの責任も重い。発言をコントロールする役目はいったい誰が担っていたのだろう。日本という国の最高権力者の発言は、国民だけでなく、周辺諸国も注目している。最低でも県外というのは「党としてのマニフェストではなく私の思い」などというのは、いったい何を言おうとしているのか分からない。ひょっとしたら公約違反ではないと言いたいのだろうか。しかし首相の発言は、絶対の重みを持っていることをお忘れではないだろうか。塩川正十郎元財務大臣だったか、「鳩山首相は政治音痴」と切り捨てていたが、その通りだと思われても仕方があるまい。
支持率が低下する一方では、鳩山首相の求心力もますます低下し、周辺は参院選をにらんで右往左往することになる。結局、そこで出てくる政策は、将来を見据えた政策ではなく、ただただ票を求める「ばらまき」になるだろう。しかし日本の財政は、もはやばらまきには耐えられない。ギリシアのようになってからでは遅いのである。民主党が手本とする英国では、二大政党制が崩れ、第3極の自民党がキャスティングボートを握る格好になった。しかし誰が首相になっても、やることは財政の再建。政府支出のカットと増税である。その英国よりも日本のほうが厳しい状況にある。「政治音痴」の首相に任せておける時間はあまりない。
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