速報記事で、誤報が生まれるワケ:相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
一部の新聞社やテレビ局で“速報記事”が強化されている。「他社との差別化を図る」というのが最大の目的だが、報道現場で生の声を拾ってみると、誤報を量産する危うい要素が潜んでいそうだ。
基本に立ち返れ
結果から申し上げると、速報は難しい。新聞やテレビの記者が普段書いている記事が長距離走だとすると、速報は100メートル競走なのだ。通信社記者の場合、双方を同時にこなすよう徹底的に訓練されるが、それでも先に触れたような事態が起こると大混乱に陥ってしまう。
「生煮えでも良いから、速く原稿をあげろ」――。過日、某民放局の報道局に出向いた際、局幹部が現場ディレクターにこんな指示を出している場面に遭遇した。同局は速報強化キャンペーンの真っ最中。永田町で発生したとある事案をめぐり、「他局よりも遅い速報テロップはもってのほか」というのが局幹部の発言の真意だった。
「現場記者のあやふやなメモでさえ、速報のネタとして系列企業に売るようだ」――。某在京紙の現場記者からもこんな話を聞いた。同社は系列テレビ局各社と速報強化を計画中。専業通信社から受ける配信を抑制し、自社の取材ネットワークで経費節減と他社との差別化を同時に狙うという。
かつて嫌というほど速報に携わった筆者だが、明日から現場に復帰せよとのお達しがでたら間違いなく断わる。メモを取るスピードが格段に落ちている上に、「なにがニュースか」を判断する思考回線が錆び付いているためだ。リハビリには2カ月程度を要するだろう。速報経験のない記者がいきなり始めたらどうなるか。懸命な読者はその危うさを理解していただけよう。
ここ数カ月の間、新聞・テレビの分野でいくつかの誤報が発生した。その背後には「速報」を急ぐがあまり、「裏を取る」「なにがニュースか」を精査する基本動作が軽視されていたことがあると筆者はみる。各社は報道の基本に立ち返り、速報体制の足元強化を図るべきだ。
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