昇進レースで、早稲田の人間が日大OBに負けた理由:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
多くの会社は成果主義を導入しているため、いわゆる“偏差値”によって出世が決まることはほとんどない。しかしいまだに「一流大学を出たから、会社の幹部になれる」と勘違いしている人もいるようだ。
つまり、ほかの編集者が行き詰まった本を担当させたのだ。行き詰まるということは内容的にも予算的にも問題が多く、こういう本は出版されてもなかなか売れない。よくて売れて1万部と言われている。上司は副編集長がうまくいかないようなワナを仕掛けていたのだ。
ここは、大きなポイントである。上司は、部下が苦手とする仕事をさせたり、精神的に滅入る仕事を担当させることで潰すことがある。早稲田OBの副編集長はこの理不尽さを心得えていたと思うが、会社員である以上、上司の指示を拒むことはできない。
副編集長の元部下で、現在、T出版社の編集者はこう証言する。「編集長から、あの人は嫌われていた。野球で言うと、敗戦処理のピッチャーのような仕事をあてがわれていた」。敗戦処理の仕事をこなしても、高い実績は残せないだろう。
現実から逃げている早稲田OB
次に3であるが、管理職のミッションは部署の業績を上げることに尽きる。部下の育成も大切であるが、最優先は業績を上げることだ。それを踏まえると。副編集長はたとえ嫌いであっても、編集長とタイアップして15人ほどの編集者を束ねて実績を出すしかない。ところが、編集長から邪険に扱われていることを恨み、協力しない。こうなると、また上司を怒らせる。編集長から低い評価を受けるのは、当然だろう。
4について言えば、副編集長は本の著者には気を使うものの、それ以外、例えばライターやデザイナー、印刷会社には気を配れないようだ。ビジネス書の9割はゴーストライターが書いていると言われている。それならば、そのライターたちにもある程度の敬意を払わないといけない。
ところが、この副編集長と仕事をした5人のライターに確認したところ、いずれも「お金の支払いがルーズ」「要領を得ていない」とブーイングのオンパレードだった。ほかのデザイナーや印刷会社からも「仕切れていない」「誠意がない」と似たような不満が出てくる。だから、こういうスタッフが逃げていく。副編集長はまた、新たなスタッフを見つけ出さないといけない。これでは、本を作るのに時間もコストもかかる。上司からは、永遠に信用されないだろう。
しかし、本人は相変わらず「日大しか……」などと脈絡のない言い逃れをしている。そして、自分の能力は実は低いという現実から逃げている。かくして、早稲田OBは日大OBにあごで使われる日々になったのだ。
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