古くてもさすがのYASHCA、写りはすごい:-コデラ的-Slow-Life-
内部を掃除して組み立て直したレンジファインダー「YASHICA EE」で草花を撮影した。露出は若干明るめに撮れる傾向があるが、描画はシャープで上品だ。
ジャンクとして1050円で入手したYASHICA EE。レンズは綺麗だし、特に機械的に壊れているところはなさそうなので、ファインダー周りを内側から掃除して組み立て直した。二重像と実際のレンズのフォーカスもチェックしたが、特にズレているようには見えなかったので、そのまま撮影してみることにした。
桜の季節が終わり、近所の家の庭々には、いまを盛りといろんな草木が花を咲かせている。子供と公園に向かう道すがら、立ち止まってはシャッターを切った。
このカメラ、サイズ的にはそれほど大きいわけではないが、とにかくずっしりと重い。約740グラムということだから、レンジファインダーのくせに昨今のデジタル一眼よりも重いのである。まあ、軽く片手に提げて散歩するようなカメラではない。
フォーカスの二重像は結局現状よりも見やすくはならなかったので、距離合わせは慎重に行う必要がある。だがキチンを合わせれば、フォーカスはかなりかっちりと合う。
露出計の小窓は、掃除しただけあってかなりはっきりと見えるようになった。とはいっても、表示には目盛りも何もないので、絞りがいくつになっているのかまでは分からない。
フィルム巻き上げレバーは、最初の指掛かりが浅いので、使いやすくはない。レバーの先がとがっているので指が痛いが、そのあたりが改善されてくるにはまだ数年を要した時代のことである。
シャッターはかなり深く押し込まなければ降りない作りになっている。しかし、そのぶん手ブレが少なく、しっかりカメラを握るというアクションにつながっている。まあ、そのわりにはシャッター音が小さく、本当に撮れているのか心配になってしまうのだが。
カメラファンがYASHICAにこだわる理由が分かってきた
シャッタースピードは最速でも1/500、さらにF1.9という明るいレンズなので、天気のいい日は開放で撮るのが難しい。さらにシャッタースピード優先なので、絞りは成り行きになってしまうが、それでも立体感のある絵が撮れる。
露出は若干明るめに撮れる傾向があるが、描画はシャープで上品だ。最短で80センチまでしか寄れないので、小さいもののアップは無理だが、手前のボケもなかなか綺麗だ。
EE(自動露出)は逆光でもかなり上手く撮ってくれるが、空抜けの露出が苦手なようで、若干渋いトーンになる。まあしかし、セレンを使ったバッテリーレスの露出システムがいまだもってきちんと動作しているわけだから、その程度はよしとすべきであろう。
これまでYASHICAのカメラを3台扱ってきたが、ようやくカメラファンがYASHICAにこだわる理由が分かってきたように思う。やはり、富岡光学のYASHINONレンズの良さ、そしてユーザーにどう撮らせるのかのコンセプトがはっきりしている。
元々は二眼カメラで名を馳せたが、露出の自動化に積極的に取り組み、写真撮影の大衆化に貢献した。そういう意味では、RICOHの立ち位置ともちょっと似たところがある。
本格的な写真は一眼で、というのが、いまの一般的なセオリーだ。しかし、修理はというと実は一眼レフの方が簡単で、レンジファインダーの方がなまじレンズと本体が連動するぶん難しい。苦労するわりには、撮れる絵の結果で報われないことも多いレンジファインダーではあるが、YASHICAは写りがいいぶん、直しがいのあるカメラである。
小寺 信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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