菅首相が、1日でも長くトップでいるために:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
鳩山政権がつぶれ、菅副総理が新しい首相に就任した。菅首相は記者会見で「経済成長、財政再建、社会保障を一体的に実現する」と語ったが、彼の「経済理論」に疑問がないわけではない。
もし増加分を税金で賄うということであれば、例えば5兆円増やすなら消費税2%分の税金が医療費に注ぎ込まれるということになる。無駄遣いをなくしてこうした費用を捻出するというのならともかく、今年度の予算編成を見ても、過去の事業仕分けを見ても、民主党が野党のときに主張していた「20兆円ぐらいのカネはすぐに出てくる」(だから消費税は4年間は上げないと鳩山前首相は言っていた)のは虚構だったことが明らかになりつつある。もし税金を注ぎ込むということになれば、当然のことながらそれだけ財政再建が遅れるということだ。
誰がなっても日本の政治は大きく変化しない
日本の財政は危機に瀕しているわけではないにしても、先進国中では最悪の水準にある。少し乱暴な言い方をすれば、いつ国債市場から「これ以上の国債は引き受けられない」と言われてもおかしくない状況だ。そういった中でドラスチックに赤字減らしを宣言することになれば、かなり大幅な消費税増税が必要になるだろう。当然、景気に悪影響が出る。
ある米国の情報誌は、この菅政権の成立に関して報道した後、こう締めくくった。「結局のところ誰がなっても日本の政治が大きく変化することはないだろう。日本のリーダーがやらなければならないことは決まっているからである。それは財政再建だ」と書いた。
さて菅首相は、二兎というか三兎を追おうとするのか、それとも一兎ずつ順番に片づけようとするのか。それによって菅首相が1年後も首相をやっているかどうか、大きく変わってくるだろう。
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