なぜ出版社はゴーストライターを使い続けるのか?:吉田典史の時事日想(4/4 ページ)
「ビジネス書の9割はゴーストライターが書いている」といわれているが、なぜ出版社は本当の“著者”に書かせないのだろうか。関係者に聞いたところ、出版業界のある事情があるようだ。それは……?
ゴーストライターを使い続ける理由
ここから先は、私が感じ取っていることを書き加えたい。私は、出版社がゴーストライターを使い続ける理由の1つに「本の賞味期限」の問題もあると思う。本屋に本を並べ約1カ月もすると、書店から「この本は売れないからいらない」と返本を受ける。これが、「本の賞味期限」である。
ここ4〜5年は、この期間が短くなっている気がする。大型書店で働く知人たちに尋ねても、「3週間目で返本することが増えてきた」という。このような状況は、1990年代初頭にはあまりなかったのではないだろうか。本に限らないと思うが、商品のサイクルが短くなると、それを作る人にはそれなりの負担がかかるということだろう。
つまり書籍編集者は、「ハツカネズミが輪をぐるぐると回すが如く、本のプロジェクトを同時並行でいくつも回す。ここにゴーストライターを使わざるを得ない、大きな理由がある」(前述の、取材先出版社の元役員)のである。
そう考えると、「商業用日本語」を時間内に書くことができない著者が「私が書きます!」と言い始めると、それこそ「編集者からすると、ヤバイ」(前述の、取材先出版社)のだ。
ここまで来ると、こう思う人はいるだろう。
「ゴーストライター、著者、編集者が互いに助け合って本ができ上がるのだから、それでいいのではないか」
俯かん的に見ると、そのとおりなのかもしれない。しかしローアングルで……つまり、実際の関係者の証言を拾い集めると、トラブルの多い仕事であることを確信する。現在、取材を進めている中には、法的な争いにまで発展したケースもある。ほおかむりをしている著者もいる。これらを覆い隠すことは書き手の権利保護の観点からも好ましくないので、今後はそのあたりを解明していく。
関連記事
- なぜ30代前半になると、“ゆきづまって”くるのだろうか
30代前半の社員と話すと「この人は優秀だな」と思う一方、「この人はひどい」と感じることはないだろうか。もちろんどの世代にもいえることだが、特に30代前半はその差が大きく感じる。そこで彼らの特徴を調べてみると、ある共通点が浮かび上がった。それは……。 - どっちが優秀なの? 人事異動が多い人と少ない人
人事異動のシーズンになると「異動の回数が多い人が優秀、少ない人はダメ」といった話が出ることも。しかし、こうした風評は事実なのだろうか。今回の時事日想は、人事異動に詳しいコンサルタントの話を紹介しよう。 - ひょっとして……“バブル組”に苦しめられていませんか?
昔に比べ「管理職の力が強くなってきた」と感じたことはないだろうか。部下の採用、配置転換、リストラなど……いろいろなところで強権を振るい始めている。しかしこうした動きに対し、「危険な兆候」と懸念する声も出始めている。それは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.