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コラム

書いても本にならない……ゴーストライターという仕事の現実吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

ある編集者によると「ビジネス書の9割はゴーストライターが書いている」という。これまで彼らの原稿料や出版界の特殊な事情などに触れてきたが、今回は現役編集者からのタレコミをもとに、出版界の闇に迫った。

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著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」Twitterアカウント:@katigumi


 ゴーストライターについて書いたところ、編集者や著者、ライターから“タレコミ”を受けることが多くなった。例えば「あの編集者は、印税の分配でごまかした」「女性ライターが仕事を放棄した挙げ句、内容証明を送りつけた」などである。この10日間ほどで20件近くになった。

 これらをうのみにすることはできないので、本人と会うことにした。今回の時事日想は、その中で特に考え込んでしまったものを紹介する。

エッセイにまでゴーストライターが進出

 1人目は、主要出版社で文芸雑誌の編集をしている30代の女性。彼女が携わっている雑誌には、作家の「エッセイ」がある。彼女によると、そのうちの1つはゴーストライターが書いているという。作家の秘書とのメールのやりとり、違う編集者の証言などをもとに検証していくと、タレコミは信ぴょう性が高いように私は感じた。

 女性編集者は、告発した理由を説明する。

 「文芸誌でありながら、こういうことを編集部として認めていることが許せないし、理解できない。自分の良心もとがめる。上司(編集長)に言っても、相手にされない。自分なりに考えるものがあり、問題提起した」

 私も会社員のころ、これに近い思いに駆られた。雑誌の編集部にいたとき、「巻頭エッセイ」を担当した。いちばん初めのページであり、その雑誌の「顔」とも言える。私は著名な漫画家に「書いていただけませんか」と依頼したところ、本人はこう言った。

 「ほかでも(他の出版社や新聞社のこと)書いていない。私が話をすると、ライターの人がまとめてくれる。仕上がりの記事は自分が書いたみたいになるから、いいよね。あんな具合に(あなたの会社も)してくれない……?」

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