いきなり“けつまずく”菅首相、トップになって何をしたいのか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
鳩山首相が退陣し、菅首相が誕生した。菅首相はいわゆる“華麗なる一族”ではなく、市民運動出身ということもあって、国民の支持率は高い。しかし消費税の増税をめぐる発言で、「つまずいた」のではないだろうか。
そしてもう1つ。民主党マニフェストの発表で、消費税について触れたときである。「自民党の出した10%という数字を参考にしたい」と菅首相は語った。もちろん税制について超党派で議論したいと言ったのだから、自民党の提案に乗ることを一概に否定するつもりはないが、まだ超党派で議論できるかどうか決まったわけではない。ここは民主党としての考え方を出すところであり、「自民党案を参考にする」というような腰砕けの説明をすべきところではない。国民は、それぞれの政党の考え方などを聞いて、ここでそれなりに審判を下そうとしているときに、自民党案に「抱きついて」しまうのは何とも情けない。
増税もみんなでやれば怖くないということなのだろうか。しかし、これは政権党の姿ではあるまい。しかも民主党は増税を切り出す前にもっとやることがあるはずだ。政権を取る前は、無駄を削減すれば20兆円ぐらい捻出するのは簡単なことであり、社会保障の充実も予算の組み替えでできると言っていたからである。鳴り物入りの事業仕分けも結局のところ数兆円の財源を生み出すのが精一杯。とても20兆円というような数字は出てきそうにない。
こういったことについてどのように考えるのか、という「総括」を抜きにして消費税論議になだれ込まれるのは、いかに増税に理解のある有権者としても、ちょっと待ってほしいという気分になるのではないだろうか。
総理になって何をするのか
総理大臣になりたかったという菅首相。しかしこの難しい時期に総理になったということは、総理になって何をするのか、この日本をどうしたいのか、という理念こそが重要であるということでもある。なぜなら今の日本は、自分たちの将来像を見失って、ずるずると後退していくという悪夢にさいなまれているからである。もしGDP(国内総生産)ばかりが幸せの指標ではないというのであれば、それに代わる新しい価値観を国民に提示しなければならない。「強い○○」というのは具体的なようで、そこにいたる道筋が示されなければ、国民は納得のしようがないのである。
ただただミスをせず、権力の座にしがみつくようであれば、菅内閣もまた短命に終わる可能性が十分にある。
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