今、“何でもない立地”が増えている危機:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
従来は絶好の出店候補地だったような場所が、“何でもない立地”になっていると主張する筆者。時代の移り変わりにともない、立地事情はどのように変化しているのか、またこれからはどのように商売したらいいのかを考えてみた。
何でもない立地からこそ
私の肩書きの1つは中小企業診断士。パパママストアを助けるのが本来の仕事だ。そこでちょっと考えてみた。
何でもない立地だからこそ、逆に言うと何でもできる。それならば「売らない店舗」はどうだろうか。対面販売よりもネット通販が勢いを増した今、店舗は商品チェックの場でもある。それを見越して新商品などのサンプルだけを展示する店舗も出てきた。商店街であれば、店頭で注文を受け、裏手の出荷店舗から配達や宅配するもよし。売らない店舗にお客さんは、ウインドー・ショッピングならぬ“ウインドー・チェッキング”で訪れる。工芸職人やアーティストを呼び、特注品の受注生産もいいだろう。
何でもないエリアだからこそ、店を「探させる立地」にしてしまうのも手だ。路地裏の何でもない立地をあえて活用しよう。
ギャラリーや雑貨ショップが路地裏に集積する谷根千(谷中・根津・千駄木)は、東京都文京区から台東区へと広がる人気スポット。くねくねぐるりの路地裏の発見が楽しい。消費者の手には今、携帯やiPhoneがある。ナビを使って、込み入った立地でもやってくる。いやむしろ探し訪ねたいのかもしれない。
その立地にクルマはやってこなくても、自転車がやってくるかもしれない。自転車乗りがたむろできるカフェや店舗が少ないので、店頭に駐輪できて(見える場所じゃないと盗難が不安だ)、カフェでのどをうるおしつつ、ボトルにも水分補給できて、自転車用品も売る“自転車用品カフェ”はどうだろう。そこを起点にして、名所旧跡やアートなどを結んで、「自転車立地」が街を活性化するエリアに変貌させる。そんな自転車立地マーケティングなら、いつでもお手伝いしたい。
時間貸しの店舗はいかが?
店主がいなければ店主を探そう。空き店舗版“パーク24”はどうだろうか。
閉店店舗の時間貸しレンタル事例はポツポツあるが、個人や法人向けにレンタルするまとまった情報は少ない。狭い土地を駐車場に活用したパーク24の店舗版のような、店舗レンタルの時間貸しネットワークはどうだろうか。時間当たりいくらの明朗会計。回転が高まれば、いずれ固定店舗立地として息を吹き返すかもしれない。
商業者に夢を与えることこそ、自治体やタウンマネジメント会社がやるべきことだ。机の上で都市計画図で立地の線引きをし直しているうちに、現場ではもっと深刻な事態が広がっている。
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