合意を目指すか、差異を際立たせるか――2つの議論の方法:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
議論の方法には、「合意点を探るための議論方法」と「自分と相手の主張の差を明確にするための議論方法」というまったく異なった2つの方法があるというちきりんさん。それぞれの方法は、実際にはどのように使い分けられているのだろうか。
2つの議論方法をどう使い分けるか
例えばテレビの討論番組なら、「差異強調型」の方が見ていて面白いですよね。ディベートでも同様に差異強調型が基本です。与野党が政権を争っている時も、差異強調型で議論しないと有権者に選択を迫ることができません。
一方、夫婦で家を買うかどうかや子どもの進路について話し合うなら、「合意点を探るための議論」をする必要があります。そんなところで差異を明確にしても不幸なだけです。また、「1つの政党の中で異なる複数意見が存在するのだが、選挙までに党の意見として一本化したい」というような場合も同様に、合意するための議論が必要となります。
つまり、その議論によって問題を解決したい場合は、前者の議論方法を採用する必要があり、反対に、「問題は話し合いで解決するのではなく、誰か他者に多数決で正否を決めてもらうのだ」という場合には後者の方法が適しているのです。
そして、議論の司会者役を務める人は、その議論の目的に鑑み、「今は合意を形成して問題を解決すべき時なのか、それとも後々の選択に向けて、それぞれの主張の差異を際立たせるべき時なのか」ということを理解している必要があります。
特に議論することで問題を解決したい場合は、各人の議論をかみあわせるための“議論の交通整理”が必要で、司会者にはそのスキルが求められるでしょう。
また、テレビの討論番組を含め、議論を外から見ている人は、「今、自分が聞いている議論は、合意を得るための議論なのか、それとも差異を際だたせるための議論か、どちらだろう?」ということを意識して聞いていると、論点が見えやすくなったりもします。
さらに、議論をしている大半の参加者が「合意を形成して問題を解決しよう」という方向で議論しているのに、その中に1人だけ「合意に至る必要性など感じない。俺は差異を強調したいんだ」という意図を持つ人が混じっているような場合も、それを見破ることができるようになります。
それぞれの人の主張を聞きながら、「ああ、この人は合意に向けて努力してるんだな」とか「ああ、この人にとっては自分がいかに他者と違うかを印象付けることが大事なんだな」と分かれば、討論番組もまた違った角度から楽しめるようになるでしょう。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitter:@InsideCHIKIRIN。
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