数十億円のカネを捨ててまで、マネックス証券を設立した理由:35.8歳の時間・松本大(6/6 ページ)
ネット証券の草分け的な男として活躍してきた、マネックス証券の松本大社長。米経済誌『フォーチュン』で「次世代を担う世界の若手経営者25人」の1人に選ばれた男は、どのような人生を歩んできたのだろうか。
会社を立ち上げたことは、正しい決断
――マネックス証券は2000年8月に上場を果たし、60億円の資金を調達した。開業から16カ月での上場は、当時としては最速であった。
上場したものの、その後は赤字続き。50億円ほどの累損をつくりましたね。資本準備金を食い尽くすことになり、工藤はとても心配していました。「この先、会社はどうなってしまうんだろう……」「株主から預かったお金はどうなるんだろう……」と。ただその後、業績を順調に伸ばし続け、1年ほどで累損を一掃することができました。そして黒字を確保し、きちんと法人税を納めていることを誇りに思っていますね。このことを言うと、疑問に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。「なぜ、そんなことを言うの?」と。しかし会社を立ち上げて、それなりの経済活動を行い、それなりの額を国に納める――。このことはとても大切だと思っているので、マネックス証券が初めて納税したときは、本当にうれしかったですね。
いま振り返ってみて、上場前のゴールドマン・サックスを辞めてまで会社を立ち上げたことは、正しい決断だと思っています。もしあのとき「大金が手に入る」ことに目がくらみ、そのまま残っていれば、お客さまを裏切ることになったかもしれません。自分の懐が潤うことばかり考えていては、やがて金融界で相手にされなくなるでしょう。どのような理由があったとしても、お客さまをだますようなことだけはあってはいけない。この考えは、今後も決してブレてはいけないことだと思っています。(本文:敬称略)
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