ライヴシーンの革命「6chマルチUstream」「リハ全中継」 向谷実メロディーズライヴ(3/3 ページ)
UstreamとTwitterを使った究極の音楽ライヴが行われた。カシオペアの向谷実氏が中心となったライヴは、Ustreamを使って同時に6chの放送が行われ、リハーサルから楽屋裏までを丸ごと中継。演奏された曲も、UstreamとTwitterで生まれたソーシャルな作品だ。ツアー初日のもようを徹底リポートする。
ソーシャル音楽制作の輪が大きく広がる
今回のライヴについて向谷実氏は「向谷倶楽部の曲と、私のカシオペア時代の曲、そして伊藤賢治さんのゲーム音楽の楽曲を合わせて演奏し、ライヴ盤として出すことが決まっている。異なるジャンル、著作権者の異なる曲を、みなさんの同意を得てアルバムとして出すことは画期的な出来事だと思う。出演者、スタッフ、会場の皆さん、そしてTwitterで参加してくれた皆さんに感謝したい」と述べている。
中西圭三氏は「ライブ盤のレコーディングということもあって緊張したが、Twitterと会場の盛り上がりで『風』をいただいて気持ちよく歌うことができた。本当にすごいことだと思う。自分のライヴでもUstream配信をしてみたが、タイムラインの臨場感がすごかった。今回のライヴもそうだが、タイムラインの人に支えられているという実感がある」と語った。
作曲の現場から共同作業をしてきた斉藤英夫氏は「今回は曲を初めてライヴで披露したのだが、初めてという感覚がなかった。すでにUstreamとTwitterで皆さんと一緒に作ってきたこともあって、盛り上がりをすぐに共有できたのが嬉しい。今後の展開としては、向谷さんのやられていることを、他のミュージシャンができるようにレールを引いていきたい。Ustream+Twitterで音楽をビジネスにするスタイルを打ち立て、レコード会社との契約で動きにくいミュージシャンの方でも、一緒に何かできる仕組みを作りたいですね」と語っていた。
向谷倶楽部によるUstream+Twitterへのチャレンジは、「Twilight Stream」のヒットによって多くの人に知られるようになった。ミュージシャンや音楽業界の輪も広がっており、中西圭三氏など複数のアーチストが自身のライヴをUstream中継しているほか、エイベックスのようにレコード会社がプロモーションとしてUstreamライヴ中継を行うパターンも出てきている。またiTunesでライヴアルバムが発売されるなど、音楽業界の取り組みも始まっている。
ストリームで形を変えていく音楽ビジネスへ
今までの音楽シーンは、CD・着信メロディ・ライヴなど、完成されたパッケージとしてコンテンツを提供する方法でビジネスを進めてきた。しかし向谷倶楽部の音楽制作は、Ustreamによってすべて可視化され、Twitterでの参加者の声で、常に形を変えながら流動的に動いていくコンテンツとなっている。まさに「Stream(ストリーム)」のコンテンツであり、派生した様々なコンテンツ群を生んで、ファン層を増やしている。
たとえば向谷倶楽部の楽曲は、ネット配信のスタイルも面白い。携帯電話向けサイトでの着うた配信、iTunesでのシングル発売、E-ONKYOでの高音質配信(24ビット/96kHz)に加え、パートごとのレコーディング音源が販売されている。ボーカルだけ、ギターだけ、ドラムスだけという個別のパートがファイルになったもので、ユーザーが自由にリミックスできる世界初の取り組みだ。それに加えて、今回のライヴがアルバムとして発売されるほか、J-WAVEなどでおなじみのDJ Taro氏によるリミックスバージョンも発売される。
いずれも向谷実氏の発案、Twitterからのファンの声をもとにして、曲を作りながらネット配信が決まったものだ。レコーディング・ライヴの現場をすべて可視化し、Twitterでの声をプラスすることで、コンテンツの形がどんどん変わっていくのだ。この手法は今までにないスタイルだけに、戸惑う音楽業界関係者も多いかもしれない。しかしながら向谷倶楽部が実証したように、UstreamとTwitterを使ったソーシャルな音楽制作・音楽ビジネスは、間違いなく大きなムーブメントとなる。電子書籍が出版のビジネスモデルを大きく変えるのと同様に、Ustream+Twitter+ネット配信が音楽業界の常識を覆すことになりそうだ。
なお向谷実メロディーズのライヴは、この後も7月6日に福岡ROOMS(午後7時)、8日に大阪AKASO(午後7時)、9日に名古屋ブルーノート(午後6時半、午後9時15分の2回)が行われる。名古屋と大阪には中西圭三氏もゲストで参加するほか、福岡では向谷倶楽部レコーディングに参加したバイオリニスト鈴木睦美氏が参加する。新しい音楽のスタイルを実感できるので、ライヴにいってみてはどうだろうか。詳しくは向谷倶楽部の公式サイトをチェックしてほしい。
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