参院選で、民主党が惨敗したワケ:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
参院選で民主党が惨敗した。連立与党で過半数を達成できないばかりか、菅首相が目標としていた現有議席を下回った。この結果を受け、菅首相は「新たなスタートラインに立った気持ちで」と続投に意欲を示したが、今後の舵取りは厳しいはずだ。
消費税の問題は、もともと民主党が20兆円という財源を捻出できると言っていたのはどうなったのかを何ら説明することなく、消費税の引き上げを「超党派で議論したい」などと言い出した姿勢に疑問を感じたからではないのだろうか。鳴り物入りで展開している事業仕分けにしても、それで恒久財源をいくら生み出せるのかという試算はなかなか出てこず、挙げ句の果てに仕分けの本来の目的は財源を生み出すためではないなどと言い出す始末。これでは有権者は納得できまい。
菅首相に対する疑問点はまだある。鳩山内閣で急落した支持率が、菅首相になってV字回復した。そして菅首相はこの参院選は「菅内閣への信任投票だ」と言った。もしそうなら、この惨敗をどう評価するのか。「有権者の声を受け止めつつ」従来の政策を実行するという姿勢はいったいどういう意味なのか、理解しがたい。有権者がノーを突きつけたのは、税金の問題だけではないのかもしれないのである(実際、子供手当の満額支給をあきらめて、残り半分は保育所などの『現物支給』と菅首相は言ったが、これなどもおかしな話なのである。新しい保育所を作ってもすでに入っている人は関係ない。誰にでも支給する手当とはまったく性格が異なるだろう)。
「強い経済、強い財政、強い社会保障」
思いばかりが先行した鳩山首相に比べると、菅首相は「現実的」で一緒にやっていけそうだとオバマ米大統領は語った。確かに政治家には現実感覚が必要である。と同時に、何を目指すのかという「思い」も必要である。首相の「思い」とは何かと問いかければ、「強い経済、強い財政、強い社会保障」だと答えるのかもしれない。
ただこれはあまりにも大きな概念である。このことに反対する人は誰もいない。問題はこれをどうやって実現するのか、その道筋をどう考えているのか。そこがあってこそ「思い」としての意味を持つ。「普天間基地は最低でも県外移設」と明言して、結局、辞任せざるを得なくなった鳩山首相。普天間をどうやって県外へ持っていくかという道筋を米側と始めから交渉していれば、その実現は相当難しいということは分かったはずである。同じように、菅首相の「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体的実現というのが、どれぐらい難しい話なのか、もう一度よく考えてみたほうがいいかもしれない。半年たってから「勉強すればするほど難しいことが分かった」などと言われたら、有権者は浮かばれないからである。
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