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コラム

“前打ち記事”は必要なのか 独りよがりのスクープ相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

新聞などで「◯○国際会議、主要議題の全容判明」といった見出しが並ぶことが多いが、国際会議などの裏側ではどのような取材が行われているのだろうか。今回の時事日想では、いわゆる“前打ち記事”について紹介する。

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相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『誤認 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 「◯△国際会議、主要議題の全容判明」、「△□諮問委員会、最終答申の詳細明らかに」――。

 主要メディアの一面、あるいはテレビのトップニュースの項目に、こんな見出しが並んでいるのを目にしたことのある読者は多いはず。複数の読者から、一連の国際会議や諮問委員会の報道の中身と意義について知りたいとのご要望があったので、今回の時事日想では全容判明的なトピック、いわゆる“前打ち記事”について取り上げる。

“政治的セレモニー”と化している

 国際会議、かつての主要七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を例にとって話を進めてみよう。

 G7など先進国の財政、金融当局のトップが集う会議は毎年定期的に開催され、その時々の国際的な経済問題を話し合う。近年であれば、リーマン・ショック後の金融危機対応や、欧州の財政危機が主要議題になっているのはご存じの通り。

 こうした会議が開催される前段階では、入念な準備作業が行われる。日本の財務省や日銀であれば、担当部局の課長クラスが各国の同等レベルの官僚たちとともに、会議の数カ月前から議論をスタートさせる。

 この際、各国の事情を勘案しつつ、金融市場で何が問題となっているのか。例えば、ドル安やユーロ安の問題、南欧の財政状況などについて、これをどう是正していくかについての議論が闘わされるのだ。

 その後、議論は局長、財務官や日銀理事レベルの高級事務レベル交渉に移行し、収れんしていく。実際に各国の財務相・中央銀行総裁が一堂に会するときは、既に議論がほぼ決着しているのが常だ。すなわち、会議後に発表される共同声明を最終確認するための“政治的セレモニー”と化しているケースが大半なのだ。


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