会社で働く人間にとって、“責任感”とは何だろうか:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
子どものころ親や学校の先生から「責任感を持って行動せよ」と言われた人は多いだろう。そして会社に入れば上司から、同じことを言われたことがある人もいるのでは。しかし会社員にとって「責任感」とは、何を意味するのだろうか。
つまり会社の中にある労働組合は、本来は社会の価値を優先し、「公害を許さない」という行動を取るべきだった。ところが実際は、自分たちの会社の利益を優先し、労組として経営陣に強く抗議をしなかったことを指摘しているのだろう。これも、組織のおきてを優先させた行為と言えないだろうか。
こういった労働組合も、映画で2人の刑事を潰そうとする警察上層部も、そして取材に答えなかった金融機関の社員も、記事を書かせないようにした上司も、私には同じように映ってしまうのだ。つまり、いずれもが自らが所属する組織の論理を最優先しているのである。
さらに岩田氏の本には、日本人の責任意識の特徴としてこのようなことが書かれてあった。
「行為そのものは何ら集団に対する“裏切り”を含まない行為であっても、たまたまそれが、集団にとって“迷惑”な結果をもたらしたといった場合にも、ある種の責任問題が生ずる。(中略)“世間”に対して集団が苦しい立場に立たされることとなった場合などには、その行為者に対して、責任の追求が行われる」(100ページ)
この考えに従うと、映画で2人の刑事が上層部から潰される理由が分かる。2人は決して裏切りをしようと思ったわけではない。事件の全容を暴くという、刑事としての責任感に基づく行為だったのだ。だが、それは警察組織の信用を失いかねないほどに迷惑であるからこそ、上層部は責任を追求したのである。
映画は、はるか40年以上も前に起きた事件を素材にしたフィクションでしかない。娯楽と割り切ってしまえばそれまでだろう。だが、会社員が自らの信じる責任感に基づき、行動を取るときの難しさ、怖さのようなものが凝縮されているようにも思えた。
ここで問いたい。会社員であるあなたにとっての「責任感」とは何だろうか。
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