新聞社の立派な建物が残り、報道が消えてしまうかもしれない:上杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」(6)(3/3 ページ)
いわば“既得権益”ともいえる記者クラブに穴が開きつつある。これまで発表報道中心だった日本の新聞社は、今後どのように報道していけばいいのだろうか。この問題について、気鋭のジャーナリスト3人が語り合った。
窪田:今後、日本の新聞ってどうなると思いますか? これまで発表報道が中心だったのに、記者クラブに穴が開いてきました。また朝日新聞ですら記者のリストラを始めている。
相場:ボクは地方で取材することが多いのですが、地方新聞は町内の回覧板的な役割を果たしています。これは絶対に必要だと思う。でも在京紙というのは、もう必要ないのかもしれない。
窪田:都会で生活している人にとって、新聞はもういらないかもしれませんね。
上杉:少なくとも全国紙はいらない。例えば米国を見ると、全国紙なんてない。
日本の全国紙がズルイのは、自分たちも「全国紙はいらないのでは?」と思っているくせに、気付いてないフリをしていること。ニューヨーク・タイムズ時代のボスだったハワード・フレンチ元東京支局長は、「日本のメディアは砂の中に頭を入れているダチョウだ」と言っています。自分たちは安全だと思っているかもしれないが、このままでは死んでしまうぞ、という意味。砂の中に入れていると頭は安全かもしれませんが、それ以外の部分は敵に襲われるかもしれない。また砂の中にずっと頭を入れていれば、やがて窒息するだけ。フレンチ氏が言うように、日本の新聞はまさに「砂の中に頭を入れているダチョウ」ですね。
また日本の新聞は海外の新聞事情を研究して、生き残りを図らなければならない。それなのに見えないフリをしているのは、これまで護送船団に甘やかされたから。その甘えた考えを自ら変えないと、生き残ってはいけない。
窪田:その通りだと思います。毎日新聞は、共同通信社から国内ニュースの配信を受けることになりました。発表モノは共同の記事を使い、自社の記者を独自取材に振り向けるといっています。しかし全国に散らばっている記者を、東京や大阪に集約させようとしている。そうすると、地方からの独自ネタを発信できなくなりますね。
上杉:このままだと、新聞社の立派な建物や輪転機が残って、報道が消えていく可能性がありますね。
→続く
3人のプロフィール
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年からフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。著書に『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など多数。
相場英雄(あいば・ひでお)
1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。2005年に『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)など多数。
窪田順生(くぼた・まさき)
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、フライデー、朝日新聞、実話紙などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)などがある。
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