コラム
にわかに雲行き怪しい日中関係:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安庁の巡視船と衝突したことにより、日中関係の雲行きが怪しくなっている。副首相級の国務委員がこの問題に直接介入するなど、中国側の「強硬姿勢」が際立ってきた。
日中対決劇は収まるのか
こうした中国海軍の増強は、基本的には中国がこれまでの自給自足的な大陸国家から、資源や食糧を輸入する海洋国家に変貌してきたことに端を発している。アフリカとの関係強化もそうした流れの一環だ。そうなるとこの空母戦闘群は、東シナ海や南シナ海だけでなく、インド洋への進出も視野に入れているという見方もできる。
ソマリア沖やアデン海での海賊対策に中国海軍が艦艇を派遣しているのは、各国の海軍の運用を観察すると同時に、遠洋活動の経験を積むという意味があると解説する軍事関係者もいる(自衛隊艦艇も中国艦艇をかなり真剣に観察しているという)。
日本と中国は、経済的には切っても切れない関係になっている。しかし歴史問題や領土問題というお互いにナショナリズムを刺激しやすい問題では、ひとつ取り扱いかたを誤るとかなり大きな問題に発展しかねない。小泉元首相が靖国神社に参拝したことで日中関係は「政冷経熱」(経済は熱い関係でも、政治は冷たい関係)と呼ばれる長いぎくしゃくした時期があった。
そして今は、日本の政治的混乱を利用して、中国がさまざまな機会を通じて日本を「試す」時期ということが言えそうだ。中国のやや性急とも言える圧力の高め方は、民主党代表選が行われる9月14日までは日本政府も身動きが取れないことを見透かしての行動であるようにも思える。この日中対決劇が果たしてどのように収まるのか、それとも収まらないのか、まだ結論を出すのは早そうだ。
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