日本で二大政党制が成立するために必要なもの:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
昨年の衆議院選挙で民主党が政権交代を実現したことから、二大政党制の時代に入ったとしばしば言われます。しかし、ちきりんさんは、政権交代可能な大政党が2つあるだけでは二大政党制は成立せず、そこには基本思想の対立がないといけないと説きます。
日本に存在すべき二大政党
こうした状況を見ていくと、日本における対立構造としてありえる要素は、「(2)学歴の上下」「(4)経済状態の上下」「(5)国際政治グループの選択」の3つと考えられます。
この3つの要素を組み合わせると、以下のような二大政党がありえます。
A党支持者
欧米で学位をとるなどゴールドカラー的な教育を受けて、リスクをとる人生を選択する。もしくは教育を早々に切り上げ、自ら起業している。30代で年収1000万円を超える人も多いが、年収が高いというより、「年収期待値」が高い人たち。米国的な資本主義経済圏の一員としての日本を支持し、国際社会のリーダーとして尊敬される日本を志向する。フリーターやニートは“支援すべき社会層”ととらえる。
B党支持者
日本で教育を受け、日本でのみ通用する仕事に就いている。終身雇用や年功序列を好み、定年後は厚い公的福祉に守られたいと考えている。国際社会における米国の独断的な言動に嫌悪感を持ち、アジアと連帯したいと考える。経済大国である必要はないから、平和で平等な日本でありたいと考えている。フリーターやニートは“社会の構成要素”である。
A党は自民党と民主党の中堅から若手政治家の主張に近く、B党は公明党と共産党と社民党と民主党(の元市民活動家グループ)を合わせたような政党です。こういう組み合わせになれば、数合わせだけではなく、主義主張としても差異が明確な“対立軸のある二大政党制”となるでしょう。
ところが現状の政党はそうなっておらず、「A党的な自民党とB党的な公明党が、野党として(連立は解消したものの)協力している」「民主党は、党内にA党的な人とB党的な人が混じっている」という2つのねじれがあります。
この2つのねじれが解消しないと対立構造がはっきりせず、有権者にとって意味のある選択ができる二大政党制が形成されません。特に民主党は相当異なる意見の人たちを内包したまま政権をとったため、このままではたとえほかの野党が民主党と拮抗(きっこう)する議員数を抱えても、私たちは“国の行く道を決める二大政党の選択”をすることができないでしょう。
政策を同じくする人、どういう国を目指すかというビジョンが同じ人が1つの政党を形成する、そんな体制が早く実現してほしいものです。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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