コラム
「どうか、加害者にはならないで」――。殺された側の声を聞く:吉田典史の時事日想(4/4 ページ)
「死刑制度を廃止せよ」という学者や研究者などの声を聞くが、もし死刑をなくせば社会に対しどれほどの影響が及ぶのだろうか。今回の時事日想は「全国犯罪被害者の会 あすの会」の松村恒夫副代表に話を聞いた。
松村氏によると、犯罪の被害者やその家族、遺族の中には、メディアの報道により一段と精神的に苦しむ状況に追いやられた人が少なくないという。「新聞、雑誌、テレビなどが誤った伝え方をするから、世間の人たちの見方が偏見になる。いちばん多いのが、加害者にこれだけのことをされたのだから、被害者にも落ち度があったというもの。これには被害者やその家族、遺族がつくづく困り果てている」
「全国犯罪被害者の会 あすの会」が本格的に活動を始めたことで、犯罪の被害に遭った人が相談をしてくるケースが増えてきたそうだ。この中には、殺人や婦女暴行、幼女暴行といった凶悪犯罪の被害者やその家族、遺族もいる。東京都知事の石原慎太郎氏は、このように泣き寝入りをしない被害者たちや会のことを「歴史的なこと」として称えた。
松村氏は、こう締めくくった。「これまで多くの被害者や家族、遺族は声を出さなかった。それが積み重なり、加害者の人権は守られるが、被害者の人権や名誉は守られないという事態になった。それを正していきたい。そして犯罪に巻き込まれると、生活に大きな支障をきたす。例えば葬式を行ったり、病院に通院したり、ときには後遺症で家を改築したりせざるを得ない。こういう経済的な補償も国や地方自治体に求めていきたい」
読者へのメッセージを求めると、たった一言、こう答えた。「どうか、加害者にはならないでほしい」――。
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