インドが、中国を“凌駕”する日:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
インドの2010年度の経済成長率は8.5%以上に達すると予測されている。あるアナリストは「インドは主要経済大国の中で最も成長する国になるだろう」と予測しているが、そのインドに日本はどのように向き合えばいいのだろうか。
インドが経済成長において中国を凌駕(りょうが)するという根拠はいくつかある。第1は人口構成だ。モルガン・スタンレーのアナリストは言う。「高齢化する社会は労働力を必要とする。若い国には労働力がある」。これまでのアジアの力強い経済成長も労働年齢の人口が増えてきたことによるものである。そして今度はインドの番だ。労働人口に対する非労働人口の割合は、1995年には69%だったが、今年は56%になる。そしてインドの労働人口は2020年までに1億3600万人増えるが、中国ではわずか2300万人しか増えない。
第2は経済改革の成果だ。1990年代初めの経済改革が経済力の爆発的強化につながっている。関税は大きく下がり、官僚統制は脇に追いやられた。多くの企業が世界企業との競争に打ち勝っている。その結果、輸出も急増した。インド企業の中には世界的な大企業になったものもある。アルセロール・ミッタルは世界最大の鉄鋼会社だし、タタ・モーターズはジャガーとランドローバーという高級自動車メーカーを傘下に収めている。中国経済の成長は国家管理によるところが大きい。それに対して、インド経済は4500万人の起業家が引っ張っていると、インド商工会議所連合のアミット・ミトラ会長は言う。
日本にとってのインドの重要性
記事のほんの一部を紹介したが、インドに進出している日本企業は中国に進出している企業に比べると圧倒的に少ない。昔から進出している企業ではスズキが有名だが、それはむしろ例外的存在と言える。日本の企業そして政府が今後インドをどれだけ意識し、深い関係を結ぶことができるのかということが、日本の将来を決める1つの大きな要素になることは間違いない。
何と言っても、インドはインド洋に面する大国であり、そしてインド洋は日本の生命線であるシーレーンが通っている海でもあるからだ。そして中国海軍の膨張に対抗するかのようにインド海軍は原子力潜水艦を就航させた。「インド洋で他国に勝手な真似をさせるわけにはいかない」と海軍首脳は語っている。感のいいリーダーなら、日本にとってのインドの重要性を感じると思うが、果たして菅首相はどうだろうか。
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