「○○君」と呼んでいた後輩が上司に……どうすればいいのか:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
後輩が自分の上司になってしまった、という経験を持つビジネスパーソンも少なくないだろう。「○○君」と呼んでいたのに、これからはどう呼べばいいのか。今回の時事日想は多くのビジネスパーソンが経験するこの事態について、考えてみた。
これに関しての事例を挙げると、この連載で「“偏差値神話”は本当なのか 日大が早稲田をアゴで使うとき」というテーマで、学歴が社員の心にいかに影響を与えるのかを書いた。その後、インターネットを見ると、この記事を見たと思われる読者がこのようなことを書いていた。「学歴なんて関係ない!」「東大卒の連中でも使えない奴は、たくさんいる」などだ。その多くは、30代前半までの会社員経験の浅い人が書いているように思えた。
会社では上司に弱いが、インターネットの掲示板には強気のことを書ける人を、私は「ネット弁慶」と呼んでいる。まさにそのようなものがズラリと並んでいた。それらを見ていると、学歴という価値観にいかに強い影響を受けているかがつくづく分かってきた。あのような書き込みをしている人の強がりが、私には学歴にコンプレックスを持つがゆえの「悲痛な叫び」に見えた。岩田氏が唱えるように「ひとたび形成された身分序列が、なかなか消滅しない」ことが浮き彫りになってくる。
この日本人の心理的な特性は、職場での競争を加速させる働きをすると思う。多くの社員は自分が下位になる身分序列は、認めたくない。それがいったんでき上がると、その後、精神的にツライ思いをする。「ひとたび形成された身分序列が、なかなか消滅しない」ことを感じ取っているからだ。それを避けたいからこそ、上司や役員、経営者、さらに会社に必要以上に気を使う。
これに日本企業の売りとも弱点ともいえる「柔軟な職務構造」が影響を及ぼす。ルールがあいまいな職場では、上司の力はその人が本来、持っている権限以上に強くなる。例えば、リストラをする権限などがないのに平気で「辞めろ!」と言う管理職が現れる。
そして、ドドメの一発として日本企業独特のあいまいな人事評価がある。多くの企業は、表向きは「成果主義」と言う。しかし、業績で判断するのは50〜60%。残りは、行動評価である。つまり「協調性」や「責任感」などその評価基準が客観化できないようなものが並ぶ。
「ひとたび形成された身分序列が、なかなか消滅しない」という心理的な特性を持つ、多くの日本人からすると、このようなつかみどころのない職場で生き残ることは簡単ではない。身分序列を認めたくないから、上司やその上にいる人たちに、私から見ると「異様ともいえる献身」をせざるを得ない。そうすると、おのずと社員の間では熾烈な競争が始まる。
『「くん」呼びしていた後輩が上役になった時――。そのとき、やはり、会社員は苦しむものなのである。
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