プレミアムロールケーキはどのように作っているのか:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
普段甘いモノを食べなくても「コンビニではスイーツを買う」という人もいるだろう。中でもローソンのプレミアムロールケーキはロングランで売れているという。そこでローソンの担当者に、開発の裏話などを聞いた。
コンビニスイーツっていいもんだ
プレミアムロールケーキを発売した当初の販売数は1日18万個(1店舗当たり平均20個)、今ではその倍の36万個(同40個)。対前年比200%の快進撃を続けるローソンのロールケーキは、コンビニスイーツのイメージを一新した。発売当初から話題を呼び、1日当たり25個の注文が入った。皮肉にも手作業が追いつかず、柳田さんは眠れない日々が続いたという。しかしある人がこう言ってくれた。「『コンビニスイーツっていいもんだ』というイメージを浸透させたね、と。嬉しかったですね」
ヒットした要因は何だろうか。「それは平凡なロールケーキの想定外の味だ」と柳田さんは分析する。デフレ低成長時代に、消費者は挑戦よりも守りの意識が強くなっている。リスクは取らずに手堅く生きよう。自分が理解できる範囲の冒険――それがイマドキの消費者なのだろう。
だからこう言う。「こういうのが欲しかったよね」と。
ロールケーキというありふれた商品、コンビニスイーツという定番化したメニューに本格的な味という、想定内の意外性がウケた。
それは消費者行動にも表れた。コンビニ客は7対3でオトコの世界であるが、発売当初は男子のデザート買いや夕方ふらりと2個買いの客に支持された。やがて女子にも広がり「身近でこんなレベルの味が楽しめる」というクチコミで一気に爆発したのだ。
さて、1ページ目の最後に出した謎かけ。2つのパッケージの違いはどこか? 答えは「価格表示」。ローソンは9月30日からパッケージの価格表記を抜いた。つまり“プレゼント”に使えるほどおいしいコンビニスイーツにまで存在感が高まったのかもしれない。
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