災害が起きても、“きれいな水”を飲みたい:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
上下水の設備が整っており、どこでも安全な水を飲める恵まれた国、日本。しかし災害が起きれば、不衛生な水しかなくなるといったケースも起こりうる。本記事ではそんなときに威力を発揮する、独立型の小型浄水設備を紹介しよう。
ウォーターショップコンセプト
例えばべネズエラの農村に設置された設備の価格は設置費込みで2万7000ユーロ(302万4000円)、年間の維持管理費は1200ユーロ(13万4400円)。稼働年数を10年間とし年利5%の融資を利用するならば、1年間当たりのコストはおよそ4600ユーロ(51万5200円)だ。開発途上国の農村にとって2万7000ユーロの初期投資自体が過大な負担だが、ベネズエラでは設置に際して政府の補助がある。
年間の浄水生産量は3600立方メートルなので、飲料水の価格は1立方メートル当たり1.27ユーロ、1リットルならば0.0013ユーロということになる。なお、この飲料水は1リットルあたり0.01ユーロで村の住民に販売されている。先進国のペットボトル入り飲料水が1リットル0.5ユーロ程度だから、その数十分の1の価格だ。
TRUNZはこういった設備の導入・維持管理のビジネスモデルを「ウオーターショップコンセプト」として紹介している。
地元の人に無理なくリーズナブルな価格で飲料水を提供するとともに、例えば村が設備を導入すれば事業収益を地域社会のために使えるわけだ。小型浄水設備を核として地域社会の環境保全と経済活動の両立を目指す試みといえる。
TRUNZが生産する最小モデルは重さ32キロ、生産量毎時30リットルのミニタイプ。資源には恵まれないが昔から精密機械に長け知的資源を生かしてきたスイスのメーカーらしいアイデア設備だ。
関連記事
- ベルリンの壁崩壊から20年……その後の姿に迫る
1990年10月のドイツ再統一から20年が経過した。「ひとつのドイツ」は東西ドイツ国民の悲願であったが、当時の国民と政治家が描いていた統一ドイツはいまだ実現していない。今回の時事日想は統一ドイツのその後に迫った。 - 不思議の国ニッポンが、好かれる理由
ドイツ人は日本に対し、どのようなイメージを抱いているのだろうか。伝統文化を重んじる一方で、先端技術を誇るハイテクの国。また最近ではサブカルチャーの発信地としても注目を集めているようだ。 - フィレンツェで声をかけられた……旅行客を狙う、スリの手口
日本人も含め、世界各国からの観光客でにぎわっているイタリア中部の都市フィレンツェ。クリスマス休暇を使って行ってみたが、旅行ガイドブックに紹介されている手口のスリが横行しているようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.