かつての日本とは違う……中国が世界企業を買い漁っている:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
英エコノミスト誌の最新号では「中国による買収」というタイトルで特集を組んでいる。バブル経済を謳歌していたころの日本も米国の企業や不動産を買い漁っていたが、当時の日本と今の中国――どこがどのように違うのだろうか。
中国は脅威ではない
ここまでが記事の前半だが、自由市場派のエコノミスト誌は、こうした考え方は間違いであると主張する。
「中国はそうした脅威というにはほど遠い。資源にしても彼らが活発に買収している分野でも、支配的な存在になるわけではない。
それに中国は外部から見えるほど一枚岩であるわけではない。国内では競争しているし、彼らの意思決定も命令によるというより、合意に基づくものだ。確かに防衛や戦略的インフラの分野は、中国企業を入れるには微妙かもしれないが、そうした分野は非常に少ないのである。
もし中国企業が利益ではなく、政治的な動機によって買収に乗り出してきたとしても、それが消費者を満足させるものである限り、問題はない。他にも供給源があるようなエネルギーの分野に中国企業が参入してきても、安全が揺らぐわけではない。もし中国企業が国内の貯蓄をバックに安いカネを投資してきても、先進国はそのカネを利用すればいい。安いカネが中国企業を有利にするとしても、それは競争促進のルールを強化すればよく、投資そのものを閉め出すべきではない。
中国企業が世界で活躍するためには、彼らも西側世界に適応しなければならない。経営者も現地で雇い、現地での研究開発に投資もしなければならない。そして子会社を現地で上場することも必要になるだろう。
中国企業が世界に投資すれば、その利害は他国の利害と徐々に一致するようになる。そうなれば国際的に協力するという機運も盛り上がってくるだろう」
確かに原則論としてはその通りだと思う。しかしレアアースの「禁輸」という現実を経験したばかりのわれわれにとっては、そう簡単に中国による買収を歓迎できない気持ちもどこかにある。しかも中国による禁輸の結果、レアアースの価格は高騰した。ロシアも資源(石油や天然ガス)を政治的に利用したことがある。だからこそ欧州はロシアにエネルギーを依存しすぎず、供給源を多様化しようとしている。
口を開けば中国との「戦略的互恵関係」と言う菅首相だが、本当に「互恵」になるのかどうか、注意深く見守ることが必要かもしれない。
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