夢の「Rollei 35」を入手:-コデラ的-Slow-Life-
Rollei 35は人気があるカメラなので、みんな調子が悪くなると修理に出して完動品になってしまう。ジャンクのままで売られているのはあまり見たことがなかった。
あるのは知ってるけど、買うのは無理というカメラがいくつかある。古いLマウントのLeicaやNikon、Canonなどはボディだけでも相当するので、まず筆者の懐具合から考えても買える金額ではない。貧乏もここまで続くと、もはや手慣れたもので、中古カメラフェアなどがあってもLeicaは自動的に目がバイパスするようになっている。
Rollei 35もその部類のちょっと下のポジションに位置するカメラである。Leicaほど高くはないが、普通は4万円から6万円ぐらいするので、意識の端っこにはあるものの、まあよほどめでたいことがない限りは買える望みもない。
ところが先日例によって新宿界隈をうろうろしているときに、ジャンクのRollei 35を発見した。人気があるカメラなので、みんな調子が悪くなると修理に出して完動品になってしまう。ジャンクのままで売られているのはあまり見たことがなかった。
ジャンクにしては高めの1万1500円。低速シャッターがNGということであった。おそらくシャッター羽根の粘りであろう。外観もきれいだし、これを逃すとあと5年10年は買うチャンスがないように思えたので、買ってみた。
Rolleiはドイツ創業の老舗カメラメーカーで、二眼のローライフレックスはそれに続く各社二眼カメラのモデルとなった。そんなRolleiが満を持して1967年に発売したのが、フルサイズコンパクトカメラの先駆け、Rollei 35である。
歴史を変えた逸品
コンパクトカメラといえば、日本ではハーフサイズカメラのブームが1960年代初頭に起こり、低価格、簡単撮影ということもあって、爆発的なヒット商品となった。海外メーカーはハーフカメラには消極的であったため、日本のカメラメーカー、特にオリンパス、リコー、キヤノンあたりは大きく成長した。
しかし、このRollei 35により、ハーフカメラブームは終焉(しゅうえん)に向かっていく。フルサイズ35ミリ撮影のカメラで、ハーフよりも小さいカメラが登場したのだ。ある意味、カメラの歴史の曲がり角に位置する、重要な存在である。
Rollei 35にはいくつかの種類があるが、よく知られているのが初期型の、レンズの左右にダイヤルが付いているタイプである。後年レンズを変更した同型モデルも出たが、初期型のテッサー40ミリ/F3.5が付いたものは、ドイツからシンガポールに製造拠点を移しながら、長く製造された。今回入手したのはドイツ版ではなく、シンガポール版である。
実はそれまで手にとって触ったことがなかったので、このコンパクトなボディのままで撮るのだとばかり思っていたのだが、実はレンズは沈胴式で、撮影時には引き延ばしてやる必要がある。こうなるとコンパクトとはいい難いが、ハーフカメラ群はこの作りにしてやられたわけである。
レンズは、初期のものはZeiss製だが、後年コストダウンのためにRolleiのライセンス製造に切り替わった。本機にもレンズにMade by Rolleiの文字がある。絞りは6枚羽根でF3.5〜F22まで、シャッターはデッケル製で、スピードは最高1/500秒となっている。
距離は目測だが、レンズ上部にメートル表示、レンズ下にはフィート表示がある。露出計はCdS方式で、名門ゴッセンのものだ。こんな小さなボディで電池はどこに入れるのかと思ったら、フィルム装填部の上のほうに付いていた。十字に切った溝にコインを入れて回してやると、中からMR9型電池が出てきた。これはNikomatなどでも使われている古いもので、現在は互換電池の「V625U」というのが売っている。
軍艦部はシンプルで、余計なものは何もない。シャッターボタンの隣にあるのは、レンズを沈胴させるときにロック解除するためのボタンだ。ひっくり返すと表情が豹変(ひょうへん)し、とたんにメカメカしくなるところも魅力である。
小寺 信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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