インタビュー:ハイメ・アジョンが九谷焼に挑んだ足跡(2/4 ページ)
今年のデザインウィーク期間中、もっとも注目されたのが、ハイメ・アジョン氏と石川県の伝統工芸「九谷焼」の窯元、上出長右衛門窯によるプロジェクト。その足跡に迫る。
その横にはハイメ氏による詳細なスケッチが並んでおり、彼のアイデアに忠実であろうとする窯元の姿勢が伝わってくる。また、ハイメ氏が直接手がけた展示ブースは、実際の食卓にテーブルウエアが並んでいるような、リアルな雰囲気。天井には提灯を2つつなげたような、ユニークなデザインのランプシェードが吊り下げられている。そのすべてが彼らしいハッピーな世界観を演出していた。
ハイメ氏にとって、九谷焼とのコラボレーションは実際どのようなものだったのだろうか。九谷焼についてどのように感じ、制作を進めていったのか。プロジェクトの足跡を聞いた。
――最初にオファーがあったときに、九谷焼についてはどこまでご存じだったのですか。
九谷焼のことは知っていました。しかし、細かい成り立ちなどは知らなかったので、わずか1年の間にたくさんのことを学ばなければなりませんでした。
――以前から「日本の企業とコラボレーションしたい」と考えていたそうですね。それは何故ですか?
わたしはつねに、細部にわたるクオリティ、完璧さを追求する仕事がしたいと思っています。日本の文化にはとても繊細さを感じます。そういったことを追求している企業と仕事をしたかったのです。わたしはポーセリン業界の出身で、独立して10年になります。この10年の間に、リヤドロやバカラなど、歴史や伝統のある会社と一緒に仕事をしてきました。そんな中で今回、日本の伝統的な会社と仕事をすることができて、本当に良かったと思っています。
――リヤドロやバカラは、グローバルブランドです。それに比べると、石川県に根ざした九谷焼の上出長衛門窯との仕事は、かなり異なる雰囲気ではないでしょうか。初めて上出長衛門窯を訪れた際に感じたことを教えてください。
とても家庭的だなと感じました。伝統ももちろんあるのですが、たずさわっているみんなが、自分たちの作っているものに愛着を持っている、愛情をこめて仕事に取り組んでいるということをひしひしと感じましたね。小さい会社になればなるほど、末端の部分まで細かく話をすることができます。ですから、コラボレーションする際には、小さな会社の方がやりやすい部分があります。
――1年という短期間で、九谷焼についてはどのように学んでいったのですか。
時間がなかったので、集中して勉強しました。形や色の組み合わせ、九谷焼らしさを知るために、どういったパターンがあるのかを、まずは学びました。上出長右衛門窯は藍がメインカラーですが、そこに九谷焼特有の五彩(青、黄、赤、紫、紺青)といった色を組み合わせています。
また幾何学的な文様と、ユーモアあふれる絵柄を組み合わせているのも九谷焼の特徴の1つ。石川県九谷焼美術館では、男の人がうさぎを追いかけている、とてもユニークな絵柄を見ました。そういった絵柄にはストーリーが潜んでいます。そういったことを1つ1つ学んでいくことによって、より九谷焼に親近感を抱くことができました。
また、日本の食文化を学ぶため、朝から夜まで、毎日の食事も勉強になりました。日本の食器は本当に多彩で、それぞれに役割があります。すべての物、文化には理由があります。それらを小さな子どもが驚くように、見聞きして学んでいくことができました。
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