タイ国際航空で行く南ア・サファリの旅(前編):秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(6/6 ページ)
動物たちに会いたい。檻の中で飼われているライオンやキリンやゾウではなく、広大なジャングルに棲息する野生の動物たちに──。アフリカに行こうと決めたのは、そんな思いを実現するためだった。利用したのはタイ国際航空のバンコク経由便だ。前・後編の2回に分けて報告する。
旅の目的地、クルーガー国立公園へ
レストラン「カーニボル」は、ヨハネスブルグの中心から西へ20キロほど行った郊外の、ミスティ・ヒルズ・カントリーホテルの中にあった。予約しておいたテーブル席に着くと、昔の武士の刀のように長い鉄串で焼いた肉のかたまりを、ウエイターがテーブルに持ってきて切り分けてくれる。牛や豚や鶏、ラムなどのほか、シマウマやクロコダイル、インパラなどがあるというので、実際に焼いている様子を見たいと思ってキッチンへ。
なるほど、赤々と燃える火の中で、いろんな種類の肉が焼かれている。しかし、どれが何の動物の肉なのか、わたしにはさっぱり見当がつなかい。するとキッチンから出てきて一つひとつ説明してくれたのは、シェフのアベッド・ニゴさんだった。
「これがラムで、こっちがインパラ。これは何だか分かる?」
「さあ、何だろう」
「クロコダイルさ。沼地に棲息する、あのワニだよ」
「すごいね。で、ニゴさんはどれが一番のおすすめ?」
「普段あまり食べない肉にトライしてみたらどう? どれも本当においしいから」とニゴさんはいった。「例えば、これなんか最高だよ。ジラフの肉」
ジラフ? ジラフって、キリン? わたしの幼いころからの憧れだった──。かなり躊躇(ちゅうちょ)したが、シェフにせっかくすすめてもらって、断るわけにもいかない。テーブルに戻り、切り分けてもらったその肉を恐る恐る口に入れてみる。なるほど、うん、悪くない。脂身のない(しつこくない)チャーシューを食べている感じだ。
「どう、おいしい?」と、ニゴさんはテーブルまでやってきて、わたしの目を覗き込む。「気に入った?」
「うん、おいしいよ。とても」
実際、味には満足したものの、わたしの脳裏には野生のキリンたちの姿が浮かんでいた。いつもは穏やかに群れをなして暮らしているキリンたちが、わたしの吐く息がキリン臭かったりしたら、獰猛になって集団で襲ってきはしないだろうか? ともあれ、明日はいよいよ“彼ら”に会うために、クルーガー国立公園へ向かう。その旅の様子は後編で、たくさんの写真とともに詳しく紹介したい。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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