コラム
日本製品のお家芸、“複合価値”を科学する:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
携帯電話やテレビのリモコンなど、さまざまな機能が詰め込まれた製品が世の中にあふれている。その一方、単に機能を寄せ集めただけであるために、使い方が分かりにくくなっている製品も少なくない。複数の機能を組み合わせ、新たな価値を生み出すためにはどんなことが大切なのだろうか。
悩みや欲求はニーズの複合体
ワナにハマらないようにするにはどうすればいいか。悩みや欲求を“ニーズの複合体”としてとらえることだ。
例えば恋の悩みは複合体だ。相性はばっちりでも彼の収入はちょっぴりとか、彼はマジメだけが取り柄で出世しないタイプだとか、彼女はご飯も炊けない料理下手とか、化粧美人だが土台別人とか、いろいろある。すべて同時に解決できそうにない。
そんな時は、まず個々の悩み別に解決策を考える。少ない収入は共稼ぎでカバー、彼は彼女に料理を教え、彼女は彼に処世術を伝授する。彼は彼女が化粧落とす前に寝る。こうして個別の解決策を重ねていくと、やがて1つの解決策も浮き出てくる。彼女が働いて、彼は主夫とイクメンに徹するべし。これこそ夫婦という複合機能なのである。
消費者の悩みや欲求はいつも複合的である。それを多機能テンコモリで解決するのではだめだ。複合課題をバラバラにして、丁寧に1つ1つ解消策を考えてみよう。その商品内だけでなく、世の中にある商品やサービスで解消できることを挙げてみよう。その上で、解消策と解消策の“ツナギ”を想像するのだ。「こうなったらいいな」を商品パッケージやサービスプロセスに転換しよう。すると多機能を超えた複合価値が見えてくる。それこそが日本製品が失いつつある、複合をシンプルに解決するお家芸ではないだろうか。
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