公的年金は誰に支払うべきなのか:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
将来的な破たんが危惧されている公的年金制度。ちきりんさんは、いずれは公的年金制度は生活保護制度と一体化せざるをえないのではないか、と主張します。
非正規雇用で年金未納の若者を救うために
さらに、この方法はほかの施策と異なり巨大なインパクトがあります。国民年金の未払いが増えているとはいえ、加入率がほぼ100%に近い厚生年金のおかげで、大半の高齢者が年金を受け取っています。しかし生活保護を受け取っている人は約1%強です。この間のどこかに年金をもらえない人の線引きをすることで、大幅に年金財政を改善することができます。
もちろん「1億円の資産がある人には払わない」とか、「年収が2000万円を超える人には払わない」というような高いところに線を引くと、削減できる額より事務コストの方が大きくなってしまい無意味です。また、スムーズな制度改革には、国民の資産と収入が一元管理できる国民統一番号制度の導入が不可欠です。
しかし、統一番号が導入され、「貯金が300万円を切るまでは年金は受け取れない」というあたりに区分線を引けば、年金財政は一気に改善します。
受給額の引き下げや支給年齢の引き上げなどの施策は、今後急増する「若い時に正規雇用の仕事につけず、そのため私的貯蓄もままならず、加えて、高齢になってから少額の年金しか受け取れない人」の生活を直撃します。いつまでもこのような方策だけで問題が解決できるとは思えません。
そもそもこの制度は、積み立て貯金ではなく社会保障のはずです。もういちど制度の根幹に戻り、「公的な年金は、いったい誰に払うべきものなのか」という問題を考えてみるべきではないでしょうか。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
関連記事
- 毒入り食品が世界中を駆け巡る
流通のグローバル化によって、さまざまな食べ物が世界中を駆け巡る現代。しかし、そんな状況に衛生面や安全面で対応できるような国際的なルール作りがなされていないのではないか、とちきりんさんは主張します。 - 労働組合って必要なんだけどね
組織率が20%を切るまでに衰退している労働組合。しかし、縮小しつつある市場もある現代だからこそ、労働組合は必要だとちきりんさんは主張。そのためには、時代の要請に応じて使命を定義し直すことが重要だと説きます。 - 質問です。あなたは同一労働同一賃金に賛成ですか?
性別や年齢、雇用形態などに関係なく、同じ仕事をした人には同じ賃金が支払われるべきだという同一労働同一賃金の原則。しかし、立場の違いによって、同一労働同一賃金の受け止め方は、大きく変わるようです。 - 「ちきりんの“社会派”で行こう!」連載バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.