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日本企業がグローバル超競争で勝ち抜くために必要なこと――A.T.カーニー梅澤高明日本代表(3/9 ページ)

日本は海外から「新興衰退国」と揶揄されるまでに落ちてしまった――。経済学者やジャーナリストが語る、「人口減社会にあっても、豊かさは失わず、所得再分配によって格差も解消する」という青写真は、成長なくしては崩壊する。このままでは日本は、「惨めな縮小」と語る、A.T.カーニー日本代表の梅澤高明氏。トップコンサルタントが説く世界の今、日本の未来とは何か。

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電機業界とビール業界に見る日本の低迷

梅澤 まず、リーマンショックまでは日本に外貨を稼いでくれる二本柱のひとつであったエレクトロニクス産業における、大手企業の業績と時価総額をそれぞれ見てみましょう。リーマンショック以降の混乱を避けるため、ここでは比較的事業環境が良好だった2007年までのデータを見ていきます。

 キヤノンを例外として、日本企業は営業利益率も売上高成長率も総じて大変低いことが分かります。営業利益率で言えば勝ち組と言われる世界のグローバル企業は、この時期10%を超えて15%前後の水準を維持していますし、売上高成長率も海外競合のほうが高い。日本を支える産業であったはずですが、海外の競合には大きく見劣りしています。

 さらに産業構造ビジョン2010の議論で用いられた経産省の分析も見てみましょう。まず主要な製品セグメントの世界市場が2001年から2007年までどのように伸びているかを見てみると、多くの製品カテゴリーで市場規模が3〜5倍に伸びていることが分かります。しかし日本メーカーの同じ製品カテゴリーにおけるシェアは、それに反比例するように右肩下がりとなっている。成長する世界市場に、日本企業はまったく同期出来ていない。そんな姿が見てとれます。

 これは電機業界だけの話かというと、そんなことはまったくありません。次は食品業界における一大セグメントである酒類・飲料市場を見てみましょう。

 2008年の世界ビール市場を見てみると、1位はベルギーのAnheuser Busch InBev(以下、AB InBev)。本日詳しくご紹介するビール会社です。ちなみにAB InBevをご存じの方はどのぐらいいらっしゃいますか? ……比較的少ないですね。InBevについて簡単にご紹介しておくと、2004年にベルギーとブラジルのビール会社が合併して誕生した企業で、本社はベルギーにあります。2008年には時価総額で当時世界3位だったアメリカのAnheuser Busch(アンハイザー・ブッシュ)を吸収合併しました。Anheuser Buschは「Budweiser」をつくっている会社です。こちらはご存じですよね。たった4年間でこの3社が合体した結果、圧倒的な世界ナンバー1の地位を獲得したというわけです。

 2008年現在の2番手はSABMiller。こちらも聞いたことはないかもしれませんが、SABというのは「South African Breweries」の略。もともとは南アフリカのビール会社でした。このSABがアメリカのMillerを買収して誕生したのがSABMillerです。そして3位、4位には、みなさんもよくご存知のHeineken、Carlsbergが続きます。業界構造が10年で大きく動いてきたのがビール業界の実情です。

 各社の営業利益率を見てみると、AB InBevはなんと26%。また、売上高成長率は過去10年で年率20%です。年率ですよ。2位のSABMillerにしても年率20%というスピードで成長してきました。世界のトップ2社がこのように売り上げを伸ばし続けている中で、日本の大手はというとキリンにしてもアサヒにしても営業利益率は10%弱で成長率は1ケタ。これが2008年までの状況です。

 こういった状況があるからこそ、ここ2年ほどはキリンやアサヒ、あるいはサントリーが色々な形で海外展開しているという現状につながっているわけです。危機感はそれぞれ持っているんですね。国内中心の事業展開を続けて、今のままの成長スピードで、果たして我々は生き残れるのかと。

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