家庭だけで解決できるのか 親の介護、育児、そして高齢ニート:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
核家族化の進行や離婚の増加など、家族の形が変化しつつある現代社会。それにともない、これまで家庭内で解決するべきとされていた問題を、社会の側で解決する必要が出てきているかもしれません。
育児や高齢ニート問題はもはや家庭内だけでは解決できない
一方、育児については相変わらず「まずは家庭でやってください」という原則が健在です。多くの認可保育園では、母親が専業主婦では子どもを預かってくれません。優先されるのはフルタイムで働いている母親や母子家庭など、家族内では保育できない家庭です。つまり、育児に関しては家庭内での問題解決が最優先であり、「私的扶養が可能な場合は公的援助は与えられなくて当然」という考え方です。
これだけ少子化が問題視されても、父親の育児休暇の取得促進はまったく進まないし、保育所不足問題も遅々として解決されないのも、「育児は家庭(=母親)の責任」という原則が存在しているからでしょう。しかし実際のところ、少子化という社会問題を「家庭で解決しろ」と言うのは暴論です。だからこの問題は解決できないのでしょう。
同様に「家庭内で解決しろ!」と言われていますが、とても不可能と思われるのが高齢ニート問題です。30代半ばを過ぎたニートの子どもに関して、「親のしつけや育て方が悪かったのだ」と言われることもありますが、原因はともかく、だからといってこの問題を家庭内で解決するのはもはや不可能です。
40歳近くのほとんど職務経験のない息子を抱えて、年金生活をする高齢の両親にどう何ができるというのでしょう。社会が積極的に乗り出さない限り、この問題は親の年金と貯金が尽きるまで放置され続けるに違いありません。
幼児の虐待問題(特に親の年齢も若く、離婚再婚を経験しているようなケース)も同様です。家庭の形が急速に変化し、問題も多様化している中、「家庭の問題はまず家庭内で解決せよ」というコンセプトは本当にこのままでいいのか、議論を始める時期ではないでしょうか。
時には社会の側から家庭の中に首を突っ込み、「問題はありませんか?、公的な支援を使ってはいかがですか?」と積極的に介入するくらいのことが必要な世の中になりつつあるのではないかとさえ感じる今日このごろです。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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