「前向きに考えようよ」という社長に、注意せよ!:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
「前向きに考えようよ。ポジティブシンキングにならないといけない」という社長がいる。しかしこの言葉の裏には、その人の“弱み”が隠されているのではないだろうか。今回の時事日想は、とある出版社を取り上げ、この問題について考えてみる。
「負のエネルギー」を持っている経営者たち
私が、20〜30代でそれまで勤務していた会社を辞めて新たに会社を興す人を観察していると、その6〜8割くらいは「過去に傷」があることに気がつく。例えば、上司や役員らとぶつかったり、自分の扱いが低かったりして退職している。
あるいは、子どものころに家庭が不和であったりした人も少なくない。昨年、大手出版社の編集者から紹介されたコンサルティング会社の経営者は30代前半でありながら、2回離婚していた。大学受験などで挫折を経験している人もいた。少なくとも、一部のメディアが取り上げるような「光り輝く経営者」を私は取材で見たことがない。そのような人も役員や元社員、離婚した相手などから訴えられていて「傷だらけの人」なのだ。
この人たちの多くは、いわば“負のエネルギー”を持っているといえる。だから、そのコンプレックスをカモフラージュするために、ホラを吹いたりして自分を大きくみせようとする。例えば「30社以上の出版社から本を書いてほしいという依頼があったが、断った」と話した経営者がいた。この業界の内情を多少なりとも知る私からすると、それは間違いなく、嘘である。
彼らは、実は暗い過去の持ち主である。性格は「後ろ向き」であったり、「ネガティブシンキング」であるケースが多い。それを見抜かれるのが嫌であるがゆえに、盛んにその言葉を使うのではないだろうか。そして「前向きであれ!」ともっともらしいことを言いながら、自分にとって不利な状況を変えようとするのではないかと私は思う。
森さんは、前述したくだりの最後でこう結んでいる。「苛められても気にしない人は、人を苛めない。悪口を言わない人間は、悪口を言われても腹が立たないのである」(87ページより抜粋)
あなたに問いたい。会社の上司や経営者、取引先などから「前向きに考えようよ。ポジティブシンキングにならないといけない」と言われたら、どのように思うか。おそらく、多くの人は前向きな考えであるのだろうから、ことさら腹が立つこともないだろう。そのようにクールに相手を観察できるならば、すばらしいことだと私は思う。
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