バイオのあおりで、ビールが値上がりするかもしれない:松田雅央の時事日想(4/4 ページ)
ドイツではバイオガス発電ブームにより、原料となるトウモロコシの作付面積が急拡大している。このままでは大麦の国内生産が圧迫され、多くのドイツ人が好む、ビールが値上がりするかもしれないのだ。
エネルギー作物に限らず、およそすべての再生可能エネルギーはその年の天候によって生産量が変動する。これは自然に頼るエネルギーの宿命であり、特にエネルギー作物は天候に左右されやすい。不作の年には価格が高騰しバイオガス発電事業者のリスクは決して小さくないはずだが、長い目でみて売電価格保証の手厚さがそれをカバーしており、バイオガス発電は「農家にとってほとんど投資リスクの無い事業」とも言われている。
エネルギー作物の生産促進はEUの政策でもあり補助金も手厚い。例えば農家に対する生産補助金は小麦ならば1ha当たり1000ユーロ(10万7000円)のところ、エネルギー作物を生産するならばさらに200ユーロ(2万1000円)の上乗せが可能になるから、農家としてはうまみが大きい。
しかし消費者の立場からすると過剰な補助は困りものだ。
消費者は再生可能エネルギー法による電力上乗せ価格(本誌前号参照)をすでに負担しているのに、税金からも補助金が支払われるのだから、過剰な二重負担ではないのか? 庶民の家計にはエネルギー価格の高騰がズシリとひびいている。
エコロジーと経済のバランスの中で、エネルギー作物にどれだけの農用地を当てることができるか定かではないが、すでに農用地の11%を占めるところまできており、環境保全団体の主張は「もう限界」。今年だけでも約400のバイオガス発電施設建設が計画されており過熱感は強い。筆者にはバイオガス発電に政策的なブレーキのかかる日が近いように思われる。
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