「オレは変わった」という、“お山の大将”にダマされてはいけない:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
病気などのトラブルを経験し「オレは変わった」という社長がいる。しかし、人間はそんなに簡単に変わることができるのだろうか。売り上げが伸び悩んでいる会社の社長が、このようなことを言い始めたら要注意だ。
しかし、私はこういう経営者を見たことがない。大病といえば、1990年代後半に知り合った、現在50代の経営者も6年ほど前に“がん”になった。胃の摘出を受け、その後、会社に戻った。だが、相変わらずワンマンであり、社員への態度も変わらない。
これ以外にも、脳梗塞、離婚、子どもの自殺、家の全焼などを経験した経営者はいる。その人たちを観察していると、何も変わっていない。大きな病気などになれば、すべての創業経営者が変わるわけではないのだ。誰もが川畑社長のようになれるならば、多くのベンチャー企業が「10億円の壁」を越えていく。そして上場企業は増え、経済は活性化する。ところが、現実はそれとは、逆の現象が起きている。
変わったとしても、「極端な自己中心的な性格」から、「多少、周囲の意見に耳を傾ける経営者」になっただけのこと。言い換えれば、最低限度の常識をわきまえたということだろう。そもそも、1人の力で会社が成り立つわけはないのだし、常に「自分が正しい」と考えること自体がまともではない。
新卒の就活にしろ、転職にしろ、ベンチャー企業に行こうと思うならば、「10億円の壁」の前で何年も成長が止まっている会社には、“何かがある”――と思ったほうがいい。私は、そのような企業に行くことは積極的にはお勧めできない。
そのようなベンチャー企業の経営者が起死回生を狙い、本を出すことがある。本当にその人が書いているかどうかはともかく、そこには時々、「自分は変わった」といったことが書かれてある。「変わった」と自分で言っているうちは、変われるわけがない。そう、ダマされてはいけないのだ。
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