どのように働けばいいのか? 事業部制という罠:吉田典史の時事日想(4/4 ページ)
「大企業にはやりがいのある仕事はない」という人がいるが、本当にそうなのだろうか。実は大企業でも“中小企業化”が進んでいることを知っている人は少ない。中小企業化する大企業――その背景には「事業部制」があるようだ。
コミュニケーション力を高めること
ここでどのように考えるべきか。一部の評論家やコンサルタントの言うことを真に受けて、「特定分野の高度な知識や技術を身に付ければ、生き残れる」と考えるのは、実態に即していない。それはキャリアリスクを低くするどころか、リスクを拡大していく。高度な知識や技術を身に付けたところで、その仕事が経営判断により海外に行ってしまうことがあるからだ。
ではその都度、会社を変えるべきなのだろうか。私は、それはキャリア形成という観点から考えても現実的ではないと思う。自らの技能やスキルは大いに高めるべきだが、それよりも大切なことがある。例えば、上司や周囲、取引先などとのコミュニケーション力を高めることだ。自分を生かすことも殺すこともできる上司との関係は、特に大切になる。
さらにITスキルやプレゼンテーション力などを高め、ほかの社員よりも抜きん出るようにすることだ。こういったほかの事業部でも通用する力を早く、確実に身に付けたい。そして、それらを上司らに理解してもらえるような仕掛けを作るべきである。
現在就活中の学生は面接の席などで、あらゆる事業部で通用する力を持っていることを具体的にアピールしたほうがいい。また転職を考えている人は、事業部ごとの採用であれば面接官らに「戦力になる」と思わせることが必要である。ただし、大前提として「ほかの事業部に移っても成果を出すことができる人材である」ことをアピールし、それを理解してもらわなければならない。お忘れなく。
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