社長の番犬“ポチ”に、苦しめられていませんか:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
1年間に数多くのベンチャー企業が誕生しているが、その多くが名もなき中小企業のままで終わってしまう。その原因はどこにあるのだろうか。ひょっとしたらワンマン社長のそばにいる“ポチ”が、吠えているからかもしれない。
コンサルタントにこの話を聞くと、私は状況が目に浮かんできた。自分も会社員のころ、上司の飼い犬、つまりはポチにならざるを得ないときが数多くあったからだ。
このベンチャー企業は今も売り上げは4億円前後で、「10億円の壁」を突破できていない。役員を始め、社員らは次々に辞めていく。また3人のポチのうち、2人が退職したという。
ポチたちへのアドバイス
私がポチたちを観察すると、得てしてそれなりに仕事ができるタイプが多い。そして職場の空気を察知し、周囲と良好な関係を作ることができる。だからこそ、社長は自分の子分として使おうとするのではないかと思う。トラブルメーカーでひんしゅくを買うことが多い社員には、目を向けないだろう。
残念なことに、かつての私もそうなのだが、ポチは真面目な性格で不満を抱えながらも、社長の期待に応える働きをする。これが一段と、彼らをつけあがらせるのだ。
そこで、私からポチたちへアドバイスをしたい。まず、他の社員と行動をともにして、群れをなすことだ。ポチは、単独行動に走る傾向がある。これでは、ハイエナのような社長に狙われやすい。そもそも、ハイエナは“弱い”と思うからこそ、その社員をいいカモにするのである。だから、群れをなして“近寄りがたい”と感じさせることが大切だ。
さらにささやかな「抵抗」をしたい。社長からいいように使われるときには、時々、「えっ、僕がするのですか」などと小さくささやこう。大きな声で反発するのは、タブーだ。このささやき戦術こそが、自己中心的な社長を多少、冷静な思考に戻すきっかけになる。
いや、できなくともいい。わずかな「抵抗」を繰り返すことこそが、会社員にとっての最大の抵抗になるのだ。ただ、こうしていくこと自体が、ポチになると思う人もいるかもしれない。そのあたりは、読者の判断に任せたい。
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