日本が注目すべきこと、それはエジプトの動向:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
アフリカ北部、中東で王政や独裁政権に対するデモが広がっている。Facebookなどを使って民衆がデモを組織し、同時に政府が反体制派を監視している。不安定な状況が続いているが、日本はどこに注目すべきなのか。
エジプトの動向に注目
もう1つの焦点は、サウジアラビアだろう。何と言っても、最大の原油産出国であると同時に、サウジの王家は有力な親米派だ。湾岸戦争もイラク戦争もサウジの協力なしには始めることすら不可能だった。ただ民主化という意味ではサウジは大きく後れている。しかしサウジ王家は、民衆の不満をやわらげるべく、社会改革を始めており、すぐに反体制派が力を結集して王家を転覆するようなことは起こりそうにない。それでも他のアラブ諸国の動向次第では、サウジ王家がこれまでのような親米的な姿勢をどこまで保てるかという問題も再び浮上するかもしれない。
当面、日本が注目しておかなければならないのはエジプトの動向かと思われる。何といっても、エジプトは中東が安定するかどうかの最大の重しだからだ。
それにしても日本の中東原油への依存度が90%にも達していることに驚く。湾岸戦争のころ、つまり1990年代の初めは約70%だった中東依存度がなぜ90%にもなったのか。経済産業省はエネルギーの安全保障について何を考えていたのか。リスクは分散するというのがリスク管理の原則なのに、それも忘れていたのだろうか。
すでにロシアは、エネルギー需給の逼迫を見越して、プーチン首相が欧州にエネルギーの交渉に行った(表向きの理由はEUとロシアの貿易問題とロシアのWTO加盟問題である)。天然ガスをめぐって欧州とロシアは厳しく対立し、欧州はロシア依存度を下げる方向で動いていた。その切り札が北アフリカだったのだが、その北アフリカの不安定化は欧州のこうした構図を根底から覆すことになる。その隙をプーチン首相は突いた。エネルギー交渉でいまロシアは非常に強い立場にいるからである。
日本がもしエネルギー源の多様化を急ごうと思えば、その有力な候補はロシアだ。実際、サハリンでの開発には日本企業も参加していた。そうなれば日本はしたたかなプーチン首相と渡り合わなければならない。しかし極東地域では、ロシアには原油やガスの引き取り手としてエネルギーをがぶ飲みする中国が存在する。その意味で、日本が切れる札はそれほど多くない。しかも民主党は外交下手。「許し難い暴挙」などと言葉だけは威勢のいい菅首相では柔道の黒帯でもあるプーチンに手もなくひねられてしまうことは、残念ながらはっきりしている。
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