コラム
取材相手の顔を見ない、“タイピング記者”が増えている:相場英雄の時事日想(3/3 ページ)
テレビのニュースで、記者会見が映し出されない日はない。しかし記者席にいる報道陣を見ると、大半がノートPCに向かって、必死に会見を記録している。いわゆる“タイピング記者”が急増しているが、その背景には大手マスコミの安易な速報化があるようだ。
記者クラブの開放が緩やかに進行し、さまざまな会見の様子がインターネットを通じて幅広く伝えられるようになった。このため、新聞・テレビがネット向けのプログラムなどで速報態勢を強化しているのは承知している。通信社記者が得意とする、聞いたら即、記事にするいわゆる“勧進帳”を強制されている若手・中堅記者も少なくないはずだ。
だが、これでは本末転倒だ。ネットの動画サービスなどでニュース素材を読者や視聴者がそのまま体験できる中では、速報は通信社に任せておけば良い。記者は、会見者や取材相手の目を見据え、あるいは言葉の端々に意識を集中し、動画などでは分からない機微を伝える必要がある。
会見だけではない。個別のインタビューの場でも、最近はPC画面を睨みっ放しで相手の目を見ない記者が増えていると聞く。若手諸君、仕事の相手はPCではなく、生身の人間だということを忘れてはならない。
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