コラム
見過ごせない、世界そして日本の食糧問題:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
リビア危機を反映して原油価格が高騰しているが、食糧問題も見過ごすことはできない。国内では小麦、トウモロコシ、大豆、コメなどが値上がりしているが、その背景にはどういった問題が潜んでいるのだろうか。
今後の日本の農業
問題はこうした世界の状況の中で、日本は農業をどう位置付けていくのかということである。日本の食料自給率は40%。民主党政権は50%にするという目標こそ掲げてはいるが、農家を集約して大規模化するのか、それとも戸別所得補償によって農家経営を支援するのか、あるいはその合わせ技なのか、いまひとつ軸足がはっきりしない(それに自給率を上げるという話の焦点はコメではない。将来はともかく今は、コメはほぼ100%自給である)。
もしTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加すれば、どうやって自給率を上げるのか、どうやって食料安全保障を確保するのか、より複雑な方程式を解かなければならなくなる。構造的に内需が縮小する日本にとって、貿易拡大は至上命題であり、その意味では関税によって農業を守るという選択肢は残されていないのかもしれない。党派を超えた議論がまさに必要とされ、6月までには農業政策の基本方針もまとめるとしているが、その時点まで菅内閣が存続しているかどうかさえ不透明だ。
それでも世界には食料というリスクが存在する。そして現在の穀物価格高騰は、そのリスクが無視できないほどのマグマが溜まっていることの予兆かもしれないのである。
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