コラム
その報道は誰のため? 被災した子どもにマイクを向けるな:相場英雄の時事日想・特別編(3/3 ページ)
東日本を襲った大地震と津波――。大手メディアは取材攻勢を続けているが、現地から猛批判を浴びた人たちがいた一方、被災者から感謝された取材陣もいた。嫌悪と感謝の分かれ目は何か? 答えは非常にシンプルだ。
壁新聞
一方、被災者に感謝された報道陣も少なくない。先週の当コラムで触れたTwitterを通じた生活情報の配信だ(関連記事)。地元を知りつくした地方紙、地方局の記者連が集めた情報が、即座にTwitter上で流された。
「(生活情報は)避難所で非常に重宝した」(三陸地域の友人)
被災者の目線、被災地の状況を熟知し、再興に向けて読者のためになる情報は、第一級のニュースとなった。
昨年、筆者は取材やプロモーションのために頻繁に宮城県石巻市を訪れた。その際、地元紙である石巻日日新聞の記者たちと知り合った。拙著が刊行された際は、同紙に大きく取り上げてもいただいた。同紙本社は津波被害を受け、新聞社の生命線である印刷設備が破壊された。だが、同紙は毎日発行している。
記者たちが市内や周辺地域を駆け回り、つぶさに情報を集めた。記者の中には、家族の安否が分からない状況下、取材し続けた人物もいる。地元民向けの情報は本社で集約され、新聞となった。先に触れた通り、印刷設備はない(本稿執筆時点)。そこで記者たちが手分けして、大きな用紙に手書きで記事を綴ったのだ。
手書きで何十枚と綴られた石巻日日新聞は、同市と周辺地域の避難所の壁に掲示された。読者がこれを食い入るように読んだのは言うまでもない。
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