大震災後に必要なモノ、それは“情報”だ:藤田正美の時事日想・特別編(3/3 ページ)
東北関東大震災が発生し、2週間が過ぎようとしているが、いまだに現場は混乱している。避難所に必要な物資が届かない、肉親がどこにいるのか分からないといったケースが目立つ。こうした混乱を防ぐためには、情報ネットワークの構築が必要だ。
隣接する市町村との連携
1990年、イラクがクウェートに侵攻したとき、米軍はサウジアラビアに進駐した。司令部の設営を見ていると、最初はもちろんテントを張るのだが、中に持ち込まれるのは大量のPCとケーブル、そして衛星回線につなぐためのアンテナである。これによってさまざまな部隊から送られてくる情報を集めて効率的に整理し、戦況を判断すると同時に、物資をどこに送るのかを指示する。この戦争は、ロジスティクス(兵站)がいかに重要であるかを改めて教えてくれたとも言える(この作戦で指揮を取ったパゴニス中将は後に『山・動く――湾岸戦争に学ぶ経営戦略』という本を書いた)。
組織的に動かなければならないときには、情報の共有が絶対に必要だ。その共有を可能にするのが衛星回線を利用したPCのネットワークである。そしてこのネットワークをフル回転させるためには、データの記入の仕方や項目の分け方、あるいは言葉の定義などに共通の理解がなければならない。災害の避難訓練に力を入れる自治体は多いが、その先の住民支援に関わる情報ネットワークに力を入れている自治体はどれほどあるのだろうか。
100年に一度、起きるかどうか分からない大津波のために堤防を造ることも大切だ。しかしその後の復興のことを考えると、必要な情報をどのようにバックアップし、それをどのように復元するのか、隣接する市町村との連携をどうするのかを改めて考える必要があるだろう。
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