東電の振る舞い、いかがなものか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
日本国内のみならず、世界中が注目している福島第1原発の事故。事故発生から20日近くたって、ようやく東京電力の会長がメディアの前に顔を出した。しかし多くの人は東電の対応に不満や不安を感じているのではないだろうか。
公益企業としてのあり方
鼓副社長が立ったまま謝罪したから、本心から申し訳ないと思っていないなどというつもりはない。問題は「本心」ではなく「見え方」なのである。記者会見場での頭の下げ方は誰でも気にするが、話し方や表情にまで気を配っているように見えないのはなぜだろうか。例えば計画停電の発表の仕方でも、それで困る中小企業の工場などに対する配慮がほとんど感じられなかった。工場は「ご不便」という言葉ではすまない負担があるとニュースで報じられている。普通の民間企業なら、いきなり地域分けして「サービス」の供給停止を宣言することなどありえない。そんなことをすればたちまち企業の存亡に関わるからである。
東京電力にはそうした緊張感が感じられない。勝俣会長は、東電国有化という議論が出ていることについて「私どもとしては民営でやりたい」と答えた。損害賠償額が巨額に上ることも、原子炉を廃炉にするためのコストがかかることも容易に想像がつく。おそらく賠償金は数兆円にのぼり、とても一企業が負担できる金額ではあるまい。勝俣会長は国がどのように救済してくれるか分からないと語ったが、国の救済とはすなわち税金である。税金で救済されることを前提とする民間企業というものがありうるのだろうか。そのあたりは公益企業としてのあり方が問われるところだろう。
東電がこれからの数週間にどのような対応を取るかによって、利用者の目はより厳しいものになるかもしれない。その時には、巨額の賠償に対する国の支援や料金の値上げといったことについて、相当強い反発が生まれることも覚悟しなければなるまい。事故はある程度仕方がない。しかしその事故のダメージをコントロールすることがリスク管理だとすれば、少なくとも今の東電(原子力安全・保安院もだが)がうまくやっているとは誰も思わないに違いない。
関連記事
- 原発事故! すべての責任は“東電だけ”にあるのか
東日本大地震の影響を受け、福島第一原子力発電所での事故が深刻化している。東京電力の対応の遅れ、情報の遅れなどが指摘されているが、この深刻な事態をいち企業だけに任せていいのだろうか。 - 海外メディアはどう報じているのか? 東日本大震災の衝撃
東日本大震災の衝撃をドイツのメディアはどのように報じたのか。地方紙は1面に震災の写真を掲載し、ニュース専門チャンネルも震災関連の情報を流している。今回の時事日想は大震災がもたらした衝撃をドイツの視点から報告する。 - その報道は誰のため? 被災した子どもにマイクを向けるな
東日本を襲った大地震と津波――。大手メディアは取材攻勢を続けているが、現地から猛批判を浴びた人たちがいた一方、被災者から感謝された取材陣もいた。嫌悪と感謝の分かれ目は何か? 答えは非常にシンプルだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.