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大手新聞はどんな問題を抱えているのか――給与に“隠微な差”烏賀陽弘道×窪田順生の“残念な新聞”(1)(2/4 ページ)

新聞が苦しんでいる。販売部数と広告収入が落ち込み、まさに“崖っぷち”だ。しかし紙面からは、新たな動きが感じられないのはなぜだろうか。そこで元朝日新聞の記者に、新聞業界が抱える問題点を語ってもらった。

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ジャーナリストの烏賀陽弘道さん

烏賀陽:給料については東京本社、名古屋本社、大阪本社でも“隠微”な差がついている。また各部署によっても違う。僕も朝日新聞で働いているときには、あまり給料のことは気にしていなかった。しかし会社を辞めるときに、人事部から「退職金の計算をするから来てください」と連絡が来た。退職金の数字を見せてもらうことに。しかしその数字は、僕が考えていたものよりも低かった(涙)。

 僕は早期定年制度に申し込んだので、退職金に上積みがあるはずだった。しかし僕が考えていた数字よりも低かったので、その理由を聞いたところ「烏賀陽さんは週刊朝日グループに在籍されていた。新聞の政治部グループよりも低いんですよ」と言われた。さらに「烏賀陽さんは途中で、会社を休んで2年間、留学していましたよね。在職年数が少ないので、退職金が減額されるんです」と。「はあ、はいはい」と、うなずくしかなかった(笑)。

窪田:まるで年金のようなシステムですね。

烏賀陽:朝日新聞の給料が世間の平均より高いのは確か。ただ政治部・経済部・社会部といった主要な部署で働いてきた人たちと、『週刊朝日』や『AERA』といった雑誌で働いてきた人たちの給料は差があるんですよ。また同じ新聞の中でも学芸部の給料はやや低め、といった感じで、会社の中でヒエラルキーがきっちりできていますね。

 新聞は公務員のなんちゃら手当てを批判したりしていますが、朝日新聞もいろいろな手当てがあるんですよ。例えば外報部の特派員になると、会社が所有する不動産に住むことができたり、家賃や光熱費がいらなかったり。また特派員赴任手当てがあって、1日1万円ほどもらえる。この金額は僕が在任していたころの話なので、今は引き下げられているでしょうね。

窪田:1日1万円の手当てがつけば、国によってはそれだけで暮らしていけますよね。

烏賀陽:1990年代中ごろまでは、現地での経費精算が1ドル=360円で換算していた。当時の交換レートは1ドル=100円前後だったので、1ドル使うごとに260円ほど得していたんですよ(笑)。

窪田:それはひどい。経済観念がほぼゼロですね。

烏賀陽:ただ1999年にニューヨーク支局の記者に聞いたところ「その制度は僕が配属される前に打ち切られた」と言っていました。今ではタクシーチケットが1枚も出ないそうですから、この10年間に、ものすごく不況の波に洗われたようです(笑)。

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