震災後、被災地域の雇用は大幅減――野村総合研究所が試算
東日本大震災の発生を受け、被災地域に住んでいる人の雇用にはどのような影響を与えるのだろうか。野村総合研究所は「6年後には雇用者数が大幅に減少する」との見通しを示した。
東日本大震災の発生を受け、被災地域に住んでいる人(岩手県、宮城県、福島県の沿岸地域)の雇用にはどのような影響があるのだろうか。野村総合研究所の試算によると、被災前に働いていた人は77万3300人だったが、震災1年後には4万4100人減少し、6年後には減少規模が8万1500人まで拡大するとの見通しを明らかにした。
産業別にみると、震災1年後は復興特需により「建設業、電気・ガス、水道業」の雇用が増加。しかしこのほかすべての産業で雇用者数の減少を予測した。中でも被害が大きかった農業または漁業関係者は大幅に減少しそうだ。
震災6年後には「飲食店・宿泊業」「医療・福祉」「教育・学習支援」「その他サービス業」などが、やや回復する見通し。ただ被災地域で多い「卸売・小売業」と「製造業」の雇用者数は大幅に減少するという。
野村総合研究所では「雇用者数の減少だけでなく、人口減という問題もある。新たな産業を創出したり、転職支援を行ったり、あらゆる手を打っていかなければいけない」としている。
阪神・淡路大震災のときとの違い
1995年1月に起きた阪神・淡路大震災が、被災地域(神戸市、西宮市)に与えた影響はどのくらいあったのだろうか。震災4年前(1991年)に働いていた人は91万1000人だったが、震災1年後(1996年)には94万1000人に増加。しかし震災6年後(2001年)には87万3000人と震災前よりも減少した。
震災1年後に雇用者数が増えたのは「林業」「建設業」「電気・ガス・水道業」。一方、大幅に減少したのは「製造業」「金融・保険業」「不動産業」だった。「阪神・淡路大震災と違って、東日本大震災は被災地域が広く、農業や漁業で生計を立てている人が多い。特定の地域だけではなく、広域にわたって雇用を生み出さなければいけない」(野村総合研究所)という。
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