放射性物質はどのように拡散するのか――情報開示に消極的な気象庁:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
福島第1原発から大気中に放出された放射性物質は大気中をどのように拡散していくのか。放射性物質の拡散を予測した気象データがあるが、このことを知っている人は少ない。なぜなら日本の気象庁が予測データを積極的に開示しないからだ。
参考資料でも知りたい
シミュレーションはあくまで気象情報の1つであり、利用に際しては十分な注意が必要となる。不確かではあるが「需要があるから公開する」し、注意事項を併記した上で「その見方、利用の仕方は利用者自身の責任」というのがドイツ気象局の基本的な考えだ。実にシンプルで理にかなった話だと思う。
参考資料であってもぜひ知りたい。これが筆者の率直な意見である。
ドイツ気象局のWebサイトについて書くと、何より問い合わせ先を見つけやすいのがいい。また、文字通り回答者の顔が見える仕組みになっていて、回答内容に対する責任の所在をはっきりさせる覚悟がみてとれる。ちなみにドイツの公共機関や大きな企業はWebサイト上で同様の広報窓口を設けるのが常識となっている。
気象庁のWebサイトでもプレス向けのページを探したが見つからず、仕方がないので「ご意見・ご感想」をクリックし、「気象庁に対するご意見・ご感想は、こちらからお寄せください」にメールを送った。筆者の用件はご意見でもご感想でもないのだが、とりあえずこれしか選択肢がない。
試しに英語版も開いてみたが、やはり連絡先は見つからない。日本の報道関係者なら何とかなるとして、もし日本語のできない海外の報道関係者が質問を出そうと思ったら、いったいどうすればいいのだろう? 情報の公開度とはいったい何なのか、考えさせられた。
ドイツ気象局にメールを出した同じ日、日本の気象庁にも問い合わせのメールを出し、返事をいただいた。次回、シミュレーションに関する気象庁の回答を紹介しながら、情報開示のあり方について考えていきたい。
最新のシミュレーション(簡易アニメ)。これは3日後までの拡散の様子を6時間刻みで示したもの。主に西から東に吹く風に乗り、太平洋上で拡散する傾向が分かる(出典:ドイツ気象局の放射性物質拡散シミュレーション)
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