コラム
想定外そして想定外……東電は無責任すぎないか:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
福島第1原発の事故ほど「想定外」という言葉が使われたことはない。しかしこの言葉の裏には“直接的責任は自分たちにない”ことを意味している。東電や政府は「事故は防げたかもしれない」という意識が希薄だったのではないだろうか。
後手後手に回る
今回の政府の指示のどたばた(例えば屋内退避を指示すれば住民は生活を維持できなくなるということを予想していなかった)は、本来、原発事故を想定して図上演習をしておくべきことだったと思う。しかし電力会社も政府も安全神話の中に逃げ込んで、そうしたシミュレーションをやらずにすませてきた。だから住民も自治体も混乱し、結果的に政府が後手後手に回った印象を与えている。
全電源を喪失するという事態を考える必要はないと言い切ったのは、原子力安全委員会だったと思うが、これもシミュレーションの1つと割り切って考えることができたはずだ。もしこれをやっていれば、その場合はかなり厳しい状況になることが予想され、そうならないために非常用電源を強化しておくという結論が導き出されていたかもしれない。そんなことを言っても後の祭りではあるが、その代償はあまりにも大きい。
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