原発事故は「レベル7」……世界はどのように報じたのか(3/3 ページ)
東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、暫定評価を最悪の「レベル7」に引き上げた。事故から1カ月後の突然の決定に衝撃が走ったが、各国メディアはどのように報じたのか。
環球時報(中国)
IAEAトップは謝罪すべきだ
中国共産党の機関紙、人民日報の傘下にある「環球時報」は13日付社説で、レベル7への引き上げについて、「遅い修正」は周辺国が必要な対策を取るのを妨げたなどとして、「日本政府は周辺国をミスリードしようとしている」と批判した。
社説では、日本が放射性物質に汚染された水を太平洋に放出したことについても、「(中国など)北東アジアの隣国に事前に連絡しなかったのは、道徳的にも外交的にも受け入れがたい」と主張。そのうえで、欧米の各国政府・メディアはこの件で日本を批判せず沈黙を守ったとし、「もし中国やロシアが同じようなことをしたなら、欧米の世論の激しい攻撃にさらされるだろう」と、「欧米社会の二重基準」を非難した。
さらに批判の矛先は、日本のやり方を容認したとして、国際原子力機関(IAEA)に向かう。同紙はIAEAにも「大きな責任がある」と指摘し、「天野之弥事務局長の国籍が日本だからといって、日本を特別扱いすべきではない。天野氏は国連に対し今回のIAEAの不作為について謝罪をすべきだ」との主張まで展開している。
同紙が激しく批判する背景には、日本の事故を受けて中国国民の間で広がりつつある原発への不信感を払拭したいという中国当局の思惑がありそうだ。
中国では1994年に原発が初稼働し、現在4カ所で総発電能力1080万キロワットの設備がある。2020年までに100基以上の建設が計画されている。
原子力発電は中国の経済成長を支える重要なエネルギー源であり、原発推進は政府の基本方針の一つ。今回は日本を「悪者」にすることで、福島の原発事故はあくまでも「例外」であると中国国民に印象付けようとしているかのようだ。(北京 矢板明夫)
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