転職試験の舞台裏:吉田典史の時事日想(4/4 ページ)
ある調査によると、3〜4月は中途採用を行う会社が年間で最も多いという。現場の人間は「こうした人材が欲しい」と思っていても、現実には全く違ったタイプが入社したりする。こうしたミスマッチはなぜ起きるのか。転職試験の舞台裏に迫ってみた。
新天地でも立ちはだかるのは上司
ここまでひどい例は少ないだろうが、現場の責任者たちの考えが1つに定まっておらず、採用試験も混乱の中で行われることはありうるのである。けっして「現場主導=事業戦略に合致した採用試験=即戦力」となり、皆がハッピーになるとは言い切れない。むしろ、私が中途採用試験で転職した人に聞くと、上司やその部署の管理職などに不満を持っている人の方が多い。
このあたりについて、樫村さんはこう語る。
「私も会社員のころに人事の仕事に関わっていたことがあるが、上司とそりが合わないために退職する社員がいた。やはり、部下が上司を変えることは不可能に近い。それならば、部下が考え方、受け止め方を変えるしかない。上司をコントロールすることも仕事をしていくうえでの1つの能力と考えてやるしかない」
結局、中途採用試験を経て新天地で働こうとも立ちはだかるのは上司であり、会社という組織の厚い壁である。現場主導とは、現場のいい加減な管理職らが必要以上に権限を握り、その部署をかき回すこともありうることだ。これに対し、歯止めをかける働きも必要なのである。ところが、私が知る限り、そのブレーキが働く会社は少ない。それにも関わらず、盛んに転職を美化する人もいる。
最後に、樫村さんは言った。
「転職する際には、会社の体制や文化、職場の空気を調べておくことが理想だが、それは難しい。私も転職の経験があるが、新しい会社の内情を早い段階で把握することはできなかった。経営者や人事部の社員がブログやTwitterで自社の話を書いたりしているが、それだけでその会社を正確にとらえることはできない。実際に入社してみないと分からないことは多々ある」
これが、転職の1つの舞台裏なのである。
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