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コラム

大津波で崩れ去った石巻市――そこで見たものは相場英雄の時事日想・震災ルポ(1)(3/5 ページ)

津波で崩れ去った宮城県・石巻市――。友人からは「こっちは地獄だ。覚悟して来い」と言われたが、足を運ばずにはいられなかった。現場は一体どうなっているのか。生々しい傷が深く刻まれていた街の姿を、写真を交えて報告する。

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 馴染みの鮮魚店は、新たに銀行融資を受け、営業再開に向けて準備に追われていた。だが、地元関係者と盃を重ねた料理店は、店舗改装直後というタイミングで津波に飲まれた。店のご主人とはいまだに連絡がついていない。

 また、同じ地区で筆者が頻繁に出入りしたショットバー、ナイトクラブは営業再開のめどが立たず、ここで働く従業員の先行きについても未定だと聞かされた。筆者は口が卑しく、かつ、酒を飲み歩くのが常人の数倍も好きな性分だ。小説の取材で東北各地を回ったが、この石巻ほど地元関係者と酒を飲んだ土地はない。新鮮な海産物がふんだんにある。気風の良い漁業関係者から海の話を聞きながら酒を飲むことは、至上の喜びだった。

 現地に根を張り、仕事を続けてきた関係者が理不尽な津波の被害に遭ったことを思うと、変わり果てた街の風景に接し、胸が潰されそうな思いにかられた。

 街を歩くうち、何人かの知人と再会した。全身ヘドロまみれになりながらも、笑顔を返してくれる人も少なくなかった。勝手にこの街が好きだと言ってみても、筆者はしょせん他所者にすぎない。この土地に根を張り続ける人達に接したとき、返す言葉に困った。カメラを持参していたが、とても彼らにファインダーを向けることはできなかった。ジャーナリスト失格である。


石巻市門脇、南浜地区

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